庚申信仰 (民衆宗教史叢書 第17巻)によると沖縄には庚申信仰はないようです。庚申信仰の南限は 奄美の喜界島。その庚申信仰のなかでも、カネサル(庚申)と呼ばれる奄美独特の行事が奄美地方に広くみられるそう(
P95)。このカネサルという行事は喜界島が北限ということです。
カネサルは旧十月ごろの庚申の日に行われるが、喜界島の一部では旧六月に行う
という。奄美地方のカネサルは旧十月ごろ…つまり新暦でいう10月下旬から12月上旬ごろ…に行われる。一方、カネサルの北限である喜界島では旧六月…つまり新暦でいう6月下旬から8月上旬ごろに行われます。喜界島では初夏に行われるということですね。
喜界島はどのあたりにあるのか気になり調べてみました。喜界島は鹿児島県の佐多岬から南南西に約300㎞のところにあるようです。230㎞ほど南西に行くと沖縄本島につきます。喜界島は鹿児島よりも沖縄のほうが近いけど、鹿児島県に属するようです。
別のページにも喜界島のカネサルについて述べられています。
喜界島の一部では旧六月の初庚の日に、ファネー(庚)といってカネサルの行事を行うが、この日以前に八月踊をするとシマ(部落)が破れるという厳しい規定があるから、ここでは夏季の始まりを画する性格があるのかもしれない(P98)
喜界島のカネサルは春から夏へ季節が変わるときに行われるオマツリのようなものなのでしょうか。喜界島とは別の奄美の地域では10月下旬から12月上旬ごろと晩秋に行われる行事のようです。
この晩秋に行われるカネサルについて同書ではポイントをまとめてくれています。
- 牛や豚などの動物供犠を伴い、肉を食べて村人の身体を堅固にするとともに、残りの骨や肉はダラギやトベラの枝と一緒に部落入口や戸口に吊して厄除け、病気除けとした。その際、骨は左ないの縄に吊す。
- 動物の代わりにカネモチを造り、子供に食べさせ、身体を堅固にする。残りの葉をやはり村境に吊して病気や凶事除けとする。
- 一般に庚申の日には、テヘンカン(山の神)が山や里を散歩したり、海で漁をするため、カネサルの日にも海や山には行かず、家に籠って、燈を消して早く寝る。この日に神がとった魚は片目だといわれる(庚申信仰 (民衆宗教史叢書 第17巻)
P97)
カネサルのときに食べられた牛や豚の骨を縄に差し、部落の入口などにつるす風習は、沖縄にもあるという(南島の民俗文化―生活・祭り・技術の風景― - 上江洲均 - Google ブックス)
喜界島を含む奄美地方は沖縄と鹿児島のちょうど中間あたり。南国沖縄の風習と、庚申信仰がちょうど混ざり合った場所が奄美地方であるという印象を、今回の調べを通して受けました。