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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

高瀬石仏 大分県大分市高瀬加羅

大分県内の石仏や摩崖仏(まがいぶつ)は、豊後大野市、臼杵市、国東市など比較的地方にあるイメージをもっていました。開発が進んでいる大分市内にも摩崖仏(まがいぶつ)があることを知り、訪ねてみることにしました。

 

場所:大分県大分市高瀬加羅

座標値:33.179928,131.576158

 

高瀬石仏は民家裏の畑のすぐ隣にあります。そのため民家の間を通る私道のような道をとおらせていただきます。私は勇気がいりました。

しかも道を歩いていると、庭に飼われている犬に吠えられます。冷や冷やしながら民家横を通ると、すぐに石仏がある岩窟がみえてきます。

 

以下、案内板の説明を引用しながら、高瀬石仏についてご紹介したいとおもいます。

 

国指定史跡(昭和9年1月22日)

大分川支流七瀬川右岸の字加羅(から)に位置する高瀬石仏は、数少ない石窟(せきくつ)形式の摩崖仏(まがいぶつ)です。凝灰岩を彫り込んだ石窟は高さ1.8メートル、幅4.4メートル、奥行1.5メートルの規模で、この中に五像が彫り出されています。

 

高瀬石仏は、商業施設である「トキハ わさだタウン」から直線距離で南西へ1㎞地点にあります。上の写真のように、高さ2m弱の岸壁に刻まれています。岩山の壁に刻まれているわけではなく、屏風状の岩壁に刻まれているかたちになっています。

 

地図をみてみると屏風状の岸壁の両側には田畑がつくられています。高瀬石仏が刻まれる尾根状の箇所だけ比較的固い石質であったのでしょうか。

中央に結跏趺坐(けっかふざ)する胎蔵界(たいぞうかい)大日如来像を中心に、向かって右には如意輪観音像が右ひざを立てた半跏(はんか)の姿で刻まれています。また向かって左には六つの顔、六つの手と足を持って牛の背にまたがった大威徳明王像(だいいとくみょうおうぞう)が刻まれています。

 

高瀬石仏は、12世紀の終わりごろ…つまり1100年代の終わりごろに、つくられたとされています参照。つくったのは、この一帯を開発した稙田(わさだ)氏ということです。2022年から数えると、800年以上も前のことになります。800年経過していますが、大威徳明王の火焔光背や、如意輪観音の光背、また身体の一部の彩色の残りかたが、はっきりとしすぎており、やや不自然な印象を持ちます。もしかしたら、近年に紅い色や黒い色が重ね塗られたのかもしれません。

 

如意輪観音の右には頭上に馬の頭を載せた馬頭観音像があります。

 

 

大威徳明王像(だいいとくみょうおうぞう)の左にはことさら奇怪な姿をした深沙大将像(じんじゃだいしょうぞう)が彫り出されています。

深沙大将像(じんじゃだいしょうぞう)を拡大した写真です↓和歌山県の高野山霊宝館に納められている深沙大将像を見てみると、かなり厳めしい顔と姿をしており、まさに”鬼”という印象をもちます参照。いっぽう、高瀬石仏の深沙大将は、顔も身体もふっくらとし、”ひょうきん”さすら覚えてしまいます。この深沙大将は、もともと砂漠の暑さや悪疫から守ってくれる旅人の守護神、また「般若経」の守護神としてまつられたそうです参照

とくに深沙大将像は逆立った頭髪、つり上がった眉と見開いたドングリ眼(まなこ)に忿怒(ふんぬ)の表情を表わし、首には髑髏(どくろ)の首飾り、赤い褌(したおび)と虎皮の袴(ももひき)を身に着けています。また、両脚と左手には蛇がからみつき、腹には少女らしい顔が描かれているのも異様です。この深沙大将は中国の玄奘(げんじょう)【三蔵法師(さんぞうほうし)】が仏典を求めてインドを往復した時、砂漠に現れて守護した鬼神といわれます。異様な姿に表現されているのはこのためですが、腹部の人面は内に優しい気持ちをもっていることを表現したものです。

 

 

わたしは見落としていたのですが、高瀬石仏の彫られている石窟のすぐとなりに、小さな龕*1があり、ここにも三基の石仏が彫られているようです。

 

なお、石窟手前の崖面には小さな龕(がん)があり、そこには一本の蓮(はす)の茎から三つに枝分かれした蓮華(れんげ)の上に、阿弥陀三尊仏の安坐する姿が彫り出されています。こうした一根三茎仏(いっこんさんけいぶつ)は、7世紀後半の白鳳時代に盛んな造仏形式でしたが、この地方では平安時代後期まで造られていたことがわかります。大分市教育委員会

 

撮った写真に、一根三茎仏が刻まれている龕が、たまたま写っていました。

*1:「がん」と読む。仏像をおさめる厨子(ずし)。