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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

門司市と東郷村との合併を促進した峠のトンネル 福岡県北九州市門司区大字黒川

福岡県北九州市門司区に「旧桜隧道(きゅうさくらずいどう)」と呼ばれる古いトンネルがあります。この隧道は「櫻峠(さくらとうげ)」という険しい峠道のすこし西側にとおっています。 

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場所:福岡県北九州市門司区大字黒川

座標値:33.934531,130.972193

 

北九州歴史散歩 豊前編(北九州市の文化財を守る会)』P.19によると、桜隧道がとおる前の時代である15世紀、櫻峠は「上往還(かみおうかん)」と呼ばれ、豊後街道の一部として重要な峠であったそうです。

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この櫻峠はあまりにも急峻でした。地形図を確認してみると、砂利山と風師山とをつなぐ尾根部分に櫻峠が位置していることがわかります。今昔マップを確認してみると、櫻峠の北側(門司市側)に位置する丸山町が標高約20mで、櫻峠の頂上が標高約100mです。

 

約80mの標高差で、長さ約2㎞の舗装されていない峠をこえるのは、骨のおれることだったと想像されます。櫻峠のいただきには、むかしの街道沿いであることを証明するように、道祖神としての役割をもつ庚申塔がまつられていました参照

 

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座標値:33.935136,130.972586

冒頭にご紹介した旧桜隧道は、櫻峠の西側50mほどを並走するかたちで掘られています。

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↓下の写真は旧桜隧道の入り口を、南側からみたものです。

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↓こちらの写真は、上の写真よりもさらに南側(隧道から離れた場所)から撮ったものです。写真中央の道をまっすぐいくと旧桜隧道があり、右へのぼる道をいくと昔の街道で、櫻峠へとたどりつくことができます。

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 旧桜隧道が開通したのが1914年(大正3年)です(参照:『北九州歴史散歩 豊前編(北九州市の文化財を守る会)』P.19)。北九州市が5市合併により誕生したのが、1963年(昭和38年)なので参照、旧桜隧道が開通した時代は、門司区はまだ門司市でした。

 

そして、櫻峠の北側は門司市、南側には企救郡東郷村という村が存在していました。隧道が完成したとき、それまで不便だった門司市と東郷村との交通効率が飛躍的に向上したといいます。

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↑旧桜隧道の入り口部分を撮影したものです。隧道の上の部分と下の部分は石質がことなっているようにみえます。上の部分が、やや茶色に変色しています。下の部分は比較的あたらしくみえます。

 

隧道内部を観察してみると、だいぶ補修されているようで、大正時代につくられたような古めかしい印象はありません。隧道の入り口ふきんはしっかりと補強されているようで、その関係工事で隧道外入口(↑上の写真)の下部分があたらしくなっているのでしょう。

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隧道の中央側はコンクリートのふきつけにより補強されています↓ 電灯が数メートルごとに配置されていて、隧道内はかなり明るい印象をもちます。隧道特有の恐怖感はありません。

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2020年現在、旧桜隧道はのこっているものの、ほとんどこのトンネルは使用されていないようでした。↓下の写真のような新桜トンネルができているためです。こちらの新桜トンネルはかなりの交通量です。

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 上の写真は新桜トンネルを南側から撮影したものです。左側のトンネルと、右側のトンネルはやや新しさが違うようです。調べてみると右側のトンネルは1954年、左側のトンネルは2001年に開通したようです参照。交通量の増加にともない、どんどんと桜トンネルを拡大していったのでしょう。

 

門司区から南下し、この桜トンネルを含めた道路は県道262号線です。262号線はさらに南下すると”小倉南区津田新町”で国道10号線と合流します。国道10号線は九州の東側を通る主要道路です。本州の下関から九州へ入り、九州の大分方面へいくとすると、今回ご紹介した桜トンネルを通ることは必須です。

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地図をながめてみると、九州東部の交通効率を高めるためには、旧桜隧道や桜トンネルがつくられる必要があったことがわかります。