福岡県北東部に、関門海峡に突き出た企救半島(きくはんとう)があります。この企救半島の地質図をみると、とても複雑な地形をしていることがわかります。
地質図Naviを参照します。企救半島は、むかし、海の中でつもってできた層が、地殻変動により地表にでてきた場所です。泥や砂でできた岩…泥岩や砂岩…により、主に企救半島は構成されています。部分的に、マグマが冷えて固まってできた火成岩の一種である玄武岩(げんぶがん)があります。
上の地形図Naviの図をみてみると、一部分に濃い青色の箇所がみえます。企救半島の南側です。地名としては「恒見(つねみ)」という場所です。拡大してみると↓下の図のようになります。この青網掛け部分は、主に石灰岩でできていることを示しています。
鳶ヶ巣山(とびがすやま)という226mの山の南側と、鋤崎山(すきざきやま)という235mの山の西側から南側にかけて、石灰岩で構成されていることがわかります。
石灰岩は、秋吉台や平尾台に代表される「カルスト地形」をつくっている岩です。白っぽい色が特徴的で、大むかしのサンゴの死骸からつくられています。つまり、石灰岩がでてくる場所は、むかし海の底であったことがわかります。
実際に、この青い網掛け部分へ足を運んでみました。ほんとうに石灰岩でできた土地なのでしょうか?
場所:福岡県北九州市門司区大字恒見
座標値:33.848034,130.984022
上の地点からは、とてもわかりやすく、石灰岩の地形をみることができます。石灰の採掘場があるためです。とても綺麗に石灰岩の地層がみえています。しっかり地層となっており立派です。
さらに下の地点では、路傍に立派な石灰岩の岩山がそびえています。
場所:福岡県北九州市門司区恒見
座標値:33.852532,130.986092
よくよく見てみると、民家の庭先にころがっている岩や、畑で使用されている岩なども石灰岩です。石灰岩が豊富にとれる場所だということがわかります。
「吉田鉱山」とマッピングされている場所からは採石場のなまなましい岩の露出をみることができます。すごい迫力です。
場所:福岡県北九州市小倉南区吉田
座標値:33.841864,130.975793
セメント工場の跡でしょうか。周防灘(すおうなだ)に面した海岸では、コンクリート製の巨大な建物がたっています。海岸にも石灰岩がころがっており、白い岩がごろごろしています。
場所:福岡県北九州市門司区恒見
座標値:33.848189,130.984933
海に石灰が溶け出しているのでしょうか。若干、海の色が白くにごっているようにみえなくもないです。
特に、この場所は湾となっており、さらに沖には防波堤がめぐっているので、陸側からとけだしている石灰が海にたまりやすくなっているのかもしれません。
さらに、以下の地点に、お地蔵様がまつられており、このお地蔵様も石灰岩でできているようです。
場所:福岡県北九州市門司区恒見
座標値:33.848067,130.984264
だいぶ風化がすすんでいます。表情はよみとりにくいですが、つくられた当時は、もう少し彫りは深かったのではないかと想像します。石灰岩は、炭酸カルシウムでできているので水に溶けやすいと考えられ、そのため年月とともにのっぺりとした様相となったと思います。
縦長い自然石に、顔の部分だけをほりだした簡素なお地蔵様のようです。背中を丸めた、まるで老婆のような外観をしています。お地蔵様の脇にまつられている自然石も石灰岩のようです。
門司区の企救半島全体が、基本的にむかし海の底に堆積してできた地層で構成されています。そのなかでも特に、サンゴが多く生息していた地域の地層が、現在、恒見という地区に移動してきたのだと考えます。