福岡県北九州市若松区の乙丸(おとまる)という地区にある戸脇(とわき)神社で、2019年10月8日(火)に筑前御殿(ちくぜんごてん)神楽が舞われました。
場所:福岡県北九州市若松区大字乙丸 「戸脇神社」
座標値:33.908777,130.694710
今回の記事では面神楽(めんかぐら)の、「前駆(ぜんく)の神、天(あま)の鈿命(うずめのみこと)、猿田彦の神の舞」をご紹介します。
舞の名前が長いので、少し整理してみます。この舞には3人の神様が登場します。
・前駆(ぜんく)の神
・天(あま)の鈿命(うずめのみこと)
・猿田彦命(さるたひこのみこと)
前回の記事で…
・武神である「鹿島(かしま)の神」と、先に地上を治めていた「大汝(おおなむじ)の神」とが戦った
・鹿島の神が勝ち、大汝の神は地上を譲ることとなった
という物語をご紹介しました。
鹿島の神は、勝利して地上を手に入れた旨を、天上のアマテラス大神へ報告しに戻りました。すると、天の神様 御一行は地上へと降りることとなりました。一番はじめに地上へ降りる神様が、天(あま)の鈿命(うずめのみこと)です。
一番はじめに地上へ降りる目的は、「つゆはらい(※1)」をするためです(参照:パンフレット)。
※1.「つゆはらい」とは、貴人や神霊などといった高貴な者を先導すること、またはその先導する人のことである。 転じて、何事かを最初に行う行為のこともさす(参照)
天の鈿命が地上へ降りるということを、地上にいた「前駆(ぜんく)の神」が知り、これは大変だ、と地上の不浄のものをはらいのけることとなりました。前駆の神は、腰が曲がり白い髭が生えた、年をとった神様のようです↓ 両手に紙垂(しで)のついた棒を持ち、この棒で地上の不浄を払っているようです。
前駆の神は会場じゅうを歩き回り、ときどき小さな子どもの前でコミカルな動きをします。会場のかたがたの笑いをさそいます。前駆の神が不浄をはらいのけている矢先に、天の鈿命が現れます。天の鈿命は、女性の神様らしく、桃色の上衣を着て、頭に美しい冠を乗せています。右手に扇子、左手は榊(さかき)を持っています。
天の鈿命が登場して、しばらくは、前駆の神はおなじ舞台で舞いを舞います。しかし、天の鈿の登場から5分ほどで、前駆の神は舞台から退散します。
前駆の神が退散してからは、天の鈿命ひとりの舞の時間となります。手の持ち物は、鈴と紙垂(しで)がついた棒に変わります↓
天(あま)の鈿命(うずめのみこと)が天から降りてくると、天と地のあいだに、猿田彦命(さるたひこのみこと)が立つこととなります。
天の鈿命が登場してから、約15分後に、ついに猿田彦命が登場します。
猿田彦命は天の鈿命の道案内をします。わたしが、福岡県でよく目にする庚申塔(こうしんとう)には、猿田彦大神の名が刻まれています。猿田彦大神は道案内をするという神話の中での役割から、道祖神としての役割も持っています。
いつもは石塔でしかお目にかかれない神様が、実際に神楽のなかで舞われているのを見るのは感動的です。
猿田彦命の舞は、大きく、比較的ゆっくりとした舞です。はじめは天の鈿命と一緒に舞い、お互いにけん制しあうような動作がみられます。これがどのような意味を持つのか、わかりませんでした。
その後は、猿田彦命のみの舞となります。猿田彦命が登場し、退場するまで10数分でした。
次回は「手力雄(たじからお)の命(みこと)の舞」です。「手力雄の命」は、アマテラス大神が岩戸に隠れてしまった場面で、その岩戸を力でこじあける重要な役割をもつ神様です。
筑前御殿神楽も、そろそろ終盤へと近づいてきました。