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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

1921年にはじめての調査がおこなわれた大正洞 山口県美祢市美東町赤

2024年6月28日(金)に、山口県の美祢市(みねし)にある大正洞(たいしょうどう)と景清洞(かげきよどう)に行ってきました。天然記念物に指定されている鐘乳洞です。今回の記事では、大正洞についてご紹介します。

 

場所:山口県美祢市美東町赤

駐車場のGoogle map

大正洞入口のGoogle map

 

大正洞は、1921年(大正10年)1月に、大島金蔵と大島政一(おおしままさいち)氏親子により発見された洞窟です。竪穴(たてあな)で連絡していて、「牛隠し」・「極楽」・「高天原(2段)」・「地獄」の、合計5段からなっています。

 

本洞は秋吉台の東北端に近い真名ヶ岳の北麓に開口しており、竪穴で連絡して数層からなっている立体的な石灰洞である。参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

洞内はたくさんの階段があります。たしかに竪穴型の洞窟であることが実感できます。実際に、歩いてみると、外で雨がふっていたこともあり、洞内の天井からは多くの地下水が流れ落ちてきていました。なかには地下水に濡れなければ歩をすすめられない箇所もありました。カメラを水から身体で守りながら進んでいきます。

大正洞の入口

もとは牛隠し洞といい、戦乱や内乱の折に里人の牛を奪われることを恐れて、この洞内に牛を隠したというのでこの名がついていた。この部分はわずか100平方メートル程度にすぎないものであった。 参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

▼この箇所は、観光用の入口とは異なり広く開口しており、牛を出入りさせるには良い場所であると考えられます。おそらく、この場所が「牛隠し」であると考えられます。

 

夏にはこの牛隠し洞の奥から冷風が吹き出てくるので、更に奥には洞穴があるものと想像されていたが、同地の大島金蔵・政一氏父子らが、大正10年1月5日から調査にかかった。地域の人々の迷信的なことから反対もあり、苦労したが、ついに大正10年5月、内部に大洞窟のあることを発見した。発見の年代と発見者に因んで大正洞と名づけたのである。参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

1921年、約4ヶ月をかけて▼このような洞窟奥を大島氏親子が調査し、大きな洞窟であることがわかりました。「牛隠し」から奥へと続く穴です。今では床面が平らにされていますが、当時は入り組んだ進みにくい洞窟であったと想像されます。

 

 

上方向への階段▼

洞内で、一箇所、獣臭いにおいが感じられました。周辺には掃除道具もあり、おそらくコウモリから落とされてくる糞尿を除去するための道具だと考えられます。みあげるとコウモリらしき黒い塊が複数天井にはりついています。ときどき、片手の手のひらほどの大きさのコウモリが飛び交うのがみえます。

天井にはりつくたくさんのコウモリ

 

洞の入口から終点まで1キロメートル弱にすぎないが、支洞を合わせると2キロメートルに近い。参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

人がひとりやっと通れるほどの通路もあります。壁も凹凸があり、でっぱった岩をよけながらの移動をします▼

本洞は、支洞と竪穴が多く変化に富み、生成物がよく保存されていて、鐘乳石、石筍に富んでいるので学術上の資料となるものが多い。参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

▼こちらは、おそらく石灰華(せっかいか)とよばれる構造だと考えられます。洞窟の壁に沿って「雪崩(なだれ)」がおきたように石灰分がはりついています。石灰分が溶けた地下水が少しずつ流れてきてつくりあげた光景だと考えられます。

本洞は牛隠し・極楽・高天原・地獄の4部から成っている。高天原2段・極楽・地獄及び奈落の5階となっていて、縦横に連絡し、牛隠しから東へ向かうと地獄に入り、地獄は奇観に富んでいるが狭い。極楽は牛隠しより南に狭いところを60メートル通過すると洞は広く極楽に達する。参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

▼「極楽」へと続く階段をあがってゆく。

さりげなく、階段の壁にも石灰華らしきものがみえます▼

広場(極楽)にでました▼ この場所をはじめに発見した大島親子の気持ちを想像してみます。

「第一極楽」は大正洞では上層部にあたります。洞窟をのぼりきった場所にあります。ここから南東部へと登った洞窟内には「第ニ極楽」があります。第二極楽へと続く道▼

一度、上り詰め、くだった場所に第二極楽はあります▼ 第一極楽よりは、やや天井が低く狭い印象をうけます。

▼石筍(せきじゅん)と呼ばれるものがあります。天井から落ちてきた、石灰分をふくんだ地下水が、長い時間をかけて石筍をつくりだします。この石筍は、子を抱いている観音様のようにみえるために「子育て観音」と呼ばれています。

照明と石灰岩がつくる、光と影がきれいです。こちらも石灰華でしょうか▼ 滝のようになっているために滝状石灰華かもしれません。

▼こちらは「雪中の松(せっちゅうのまつ)」と題された滝状石灰華です。

最深部です▼ 写真中央部に上向きに空いている穴があります。こちらの穴は、空気の流れが季節により変わることから、地上へと続いていると考えられています。ここから引き換えして第一極楽へともどります。

▼あらためて第一極楽です。たくさんの地下水が天井からおちてきています。洞窟の中央部に池「蓮池(はすいけ)」ができています。

 

▼「獅子岩」これは地面の下から上にのびる石筍だと考えられますが、獅子岩のすぐ南東部に「まとい岩」があります。

この「まとい岩」▼は、音声案内によると、獅子岩とつながっていたと考えられ、地殻変動により、このようにバラバラになったと説明されていたようです。”ようです”というのは、音声案内で文字に残せていなく、記憶が曖昧だからです。

▼獅子岩のすぐ向こう側に、天井からまとい岩が垂れ下がっていることがわかります。まとい岩は「つらら石」と呼ばれるものに分類されると考えられます。

 

 

▼あみだ棚

▼さるのこしかけ

壁にもともと空いていた穴に石灰華ができ、棚のようになったのだと考えられます。

 

洞窟内にできた淵(ふち)です。ここでは身体が無色で、眼のないエビが発見されました。

▼蓮池(はすいけ)

第一極楽から出口へむかって進みます▼

 

地下水の流れる線に沿って、石灰華が形成されていっていることがわかります。

ところどころに金網が張られている場所があります。おそらく、その箇所の壁は、触るとボロボロと崩れやすい箇所なのでしょう。

出口にいちばん近い広場です▼

▼「華厳の滝」ちょろちょろと地下水が流れ落ちています。滝状石灰華ができています。


▼「奥の院」

▼足元をみると、大理石でしょうか。真っ白な美しい石がころがっています。石灰岩が変成作用をうけて大理石になるそうですが、この石もそうなってできたのでしょうか。

▼出口へとつづくトンネル。

 

このように洞内は変化とスリルに富んでいる。なお、洞が若く、いま成長期で、幼い鐘乳石が無数にあること、石灰洞窟の形成過程が探究できることなどが、本洞のみどころでもある。洞内に雪中の松・子育て観音・音羽の滝・尾上の松・しし岩・洞内ふち・さんご樹・けごんの滝などの名所がある。参照:美祢市ホームページ.大正洞

 

 

 

 

大正洞内は、立体的で、大きく3層になっています。上層は「極楽」と呼ばれ、初期にできた部分で、洞窟生成物がよく発達しています。洞窟生成物とは、洞窟内の天井や壁・床に滲出する地下水、あるいは洞窟内を流れる地下水流中に溶存した鉱物分の晶出/沈殿によって二次的に形成される化学沈殿物の総称のことです。

参照:洞内生成物

 


洞窟生成物の種類は、おおきくわけて、5種類あります。

参照:冊子「秋吉台3億年」.秋吉台科学博物館P.49

 


①天井からたれさがるもの

①‐1.管状鍾乳石(ストロー、鍾乳管)

①‐2.つらら状鍾乳石(つらら石)

①‐3.幕状鍾乳石(カーテン)

①‐4.曲がりくねった鍾乳石(ヘリクタイト)

ヘリクタイトはギリシャ語で「ねじれ」を意味します。

 

参照:龍泉新洞ホームページ.龍泉新洞科学館のみどころ.ヘリクタイト

 


②鍾乳石と石筍(せきじゅん)がつながったもの

②‐1.石柱

 


③下から上にのびるもの

③‐1.タケノコ状石筍

③‐2.キノコ状石筍

③‐3.うす状石筍

③‐4.ハス状石筍

③‐5.泥筍(大部分が泥でできている石筍)

③‐6.ヘリグマイト(曲がりくねった細い石筍)

ヘリグマイトは、方解石の結晶がずれて重なり合っており、薄いマッチ箱を押しつぶしたような四角い結晶がつらなってできています。おそらく、洞窟内の石灰分を含んだ水蒸気が細い管をつくり、その作り上げられた管のなかを毛細管現象により、また石灰分をふくんだ水がすいあげられてゆくことでできたと考えられます。

 

参照:あぶくま洞・入水鍾乳洞.ものしりブック.鐘乳洞のなかには

 


④壁に付着して大きくなるもの

④‐1.あぜ状石灰華(リムストーン、石灰華段丘)

④‐2.滝状石灰華

④‐3.花状石灰華

④‐4.サンゴ状石灰華

 


⑤壁に付着しないで大きくなるもの

⑤‐1.まめ石(ケイブバール)

 

これは滝状石灰華か



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大正洞の出口から外にでて、受付までの道のりでも石灰岩の奇岩群をみることができます。