福岡県の遠賀郡水巻町に「えぶり」という、珍しい地名あります。「えぶり」は、車でそばを走っていても、1分もあればすぐに通り過ぎてしまうような小さな地区です。
以前に、この地区に残る伝承をご紹介しました。
えぶりという地区は、平地にぽこっとお椀型の豊前坊山という小さな山があるのが特徴的です。
なんとなく、この山には何かがあるのかな…と感じていました。そういうわけで、なんとなくこの地域には興味を持ってて、豊前坊山に登り、地名についても調べてみたのです。
この珍しい地名は↓下の写真のような、農機具に由来があるそうですよ。”くぼたのたんぼ”という農業について書いているサイトを見てみると、えぶりが紹介されていますね。
柄振 (えぶり)
土の表面を人の手で丁寧に平らにするための農具です。また、田畑の地ならしや穀物の実などを掻き寄せるときにも便利です。
水巻昔ばなし(柴田貞志著)では、
芦屋千軒
関(下関)千軒
京は九万九千軒
朳(えぶり)はたった十三軒
今でもそうであるが、昔から朳(えぶり)は小集落であったので、このようにいわれていた。それは遠賀川と朳山に挟まれた細長い狭あいな水田からなって、稲作をするにも限度があるので、よそ者をうけ入れる余地はなく、永いあいだ貧乏な時代がつづいた。
と紹介されています。
えぶりの地名がついた地区は、今でも田んぼが広がり人家は少ないという印象を受けます。でも豊前坊山と明神ヶ辻山の間に挟まれた緑ヶ丘という地区は、今では整備された住宅街となっていますね。
ずいぶん昔は人が住まない地区だったようですが、石炭産業が発達するにつれて、えぶりの隣にある緑ヶ丘の地区には炭坑労働者が住むようになり、結果長屋ができたそうです。それから時代の変化とともに、今のような住宅街と変わったのですね。