場所:長崎県佐世保市吉井町大渡
座標値:33.269191,129.695951
長崎県佐世保市吉井町にあるポットホール公園には、佐々川の自然を生かして整備された全長500mの遊歩道沿いに、640個以上のポットホール(甌穴)群が見られます。他の地域ではあまり見られない、めずらしい地形です。



ポットホール(甌穴)は、硬い岩盤が、水流の渦流と、それに捕捉された砂礫(研磨材)の回転作用によって、数万年かけて削られることでつくられます。
佐世保市吉井町の佐々川流域で、たくさんのポットホールが発達した背景には、特に以下の要因が組み合わさっていると考えられます。

硬質な岩盤の存在
ポットホールの形成には、河床に割れ目の少ない硬い岩盤が存在することが必須です。佐世保地域、特に佐々川が流れる北松浦半島一帯の地質は、主に新第三紀に属する砂岩や頁岩(けつがん)などの堆積岩類から構成されており、これらはさらに北松浦玄武岩類の溶岩に覆われています。

玄武岩類
佐世保市妙観寺峠付近などには普通輝石かんらん石玄武岩(硬質な火成岩)が分布しており、河川の上流部や中流部では、これらの硬質な岩石が岩盤を形成している可能性があります。

地質図naviを参照してみると、たしかに、川の上流域には玄武岩の地質がひろがっていることが確認できます。
堆積岩類
ポットホールは、波の侵食力に対して崖の抵抗力が釣り合う中程度の強度(シュミットハンマー反発値R=25~50)の岩盤で、奥行きが最も発達しやすいという研究結果があります*1。佐世保地域の地層(例:杵島層群、相浦層群)には砂岩層が多く含まれており*2、これらの岩盤が適切な抵抗力を提供したと考えられます。
つまり、もし岩盤が硬すぎると、波がいくら当たってもなかなか削れないし、逆に柔らかすぎると、穴ができる前に崖全体が崩れてしまいます。ポットホールができている吉井町ふきんの地層には「砂岩」の層が多く含まれており、この砂岩が、まさにポットホール(穴)が発達するのに最適な「中程度の硬さ」を持っている可能性が考えられます。

効率的な侵食を促す環境条件
佐々川流域では、ポットホール形成に必要な水流と研磨材の供給が効率的に行われていると予想されます。
速い水流と渓谷
ポットホールは一般に、河川の上流や中流の流れが速く、岩盤があるところにできやすいとされています*3。佐々川は「清流と渓谷、奇岩を生かした公園」と評されており、ポットホール公園がある吉井町大渡は、佐々川の支流である福井川が合流する付近に位置します*4。
構造的な傾斜と下刻作用
佐々川衝上断層によって地質が複雑な佐世保地域では、局所的に川の流れが急になる場所(遷急区間)ができました。そこでは水の勢いが強まるため、川底を深く削る力(下刻作用)が活発になったと考えられます。

豊富な研磨材(礫)の供給
佐世保地域の地質は、玄武岩、砂岩、頁岩、チャート、花崗岩など多様な岩石を含んでいます。これらの硬質な岩石が風化・侵食され、河川に供給されることで、ポットホールを削る研磨材(礫)が豊富に存在します。特に、効率的な侵食には32mm~128mm程度のサイズの礫が重要であると指摘されています。

列状配置の可能性
ポットホールが「多数」集まってできる理由は、川の流れに生じる「縦渦(たてうず)」が関係している可能性があります。
別の地域の調査によると、この渦によって川底には水が「湧き上がる」場所と「沈みこむ」場所ができます。砂や小石(砂礫)は「湧き上がる」場所に集まって列を作る傾向があります。
この砂礫の列に沿って岩盤が集中的に削られるため、結果としてポットホールも列状に「多数」形成されるのではないか、と考えられています*5*6。


佐々川のポットホール群も、このような流れのメカニズムによって、特定の区間で集中的、かつ、列状に形成された結果、「無数にある」という景観を作り出している可能性があります。
これらの地質条件と河川作用が複合的に作用し、佐々川のポットホール公園は、日本国内でも類を見ない、大規模なポットホール群として知られるようになりました。
ポットホール公園には、おそらく、むかしは使用されていたのでしょう。河川プールらしき跡がありました。
