日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

日本一の断層を体感できる場所 長野県飯田市南信濃八重河内

日本には、関東から九州に伸びるとても長い断層があります。「中央構造線」とよばれる断層です。この断層が、川の流れによって侵食されてできた、おおきな谷がある場所があります。長野県の遠山(とおやま)谷です。下の略図でいうと、緑で囲った箇所です。

中央構造線を境に地質が異なる

地質図naviで、遠山谷のあたりの地質を確認してみます▼ 東西であきらかに地質が異なっていることが確認できます。

参照:中央構造線とは | 信州遠山郷

 

中央構造線から西側は暖色系で示されている地形…つまり、花崗岩(かこうがん)や閃緑岩(せんりょくがん)などの岩石でできています。これらの岩は地下深くでマグマがゆっくり固まってできた「深成岩」に分類されます。

 

中央構造線から東側は灰色や緑色系、寒色系で示されている地形…つまり付加体(ふかたい)や、砂岩泥岩互層、石灰岩などの「堆積岩」でできています。

遠山谷は、この深成岩と堆積岩とで構成された地質の境目にできた谷のようです。国土地理院地図の色別標高図で、遠山谷のふきんを確認してみます▼

赤色の箇所が標高の高い場所、緑色・青色になるほど標高の低い場所になります。画面の中央付近が遠山谷です。

 

もうすこし拡大して確認してみます▼ 縦にナイフで切りつけたような、するどい亀裂が南北にはしっているのがわかります。この部分が中央構造線だと考えられます。このように断層の破砕帯を川が侵食してできた谷のことを断層谷(だんそうこく)と呼びます。

 

参照:宇宙からも見える中央構造線の谷 | 大鹿村中央構造線博物館

中央構造線が、九州で確認できる場所がないか期待しましたが、九州ではこの巨大な断層を確認できる場所はないそうです。

 

九州での中央構造線の有無や位置については諸説ありました。地質的に九州を南北に分ける境界の一つである臼杵-八代構造線 (一部活断層)につなぐ説もありました。しかし以下に示すように九州には中央構造線はありません。このため、当然中央構造線活断層系もありません。

 

参照:地質調査総合センター,中央構造線に関する現在の知見

 

断層を体感できる青崩峠

この断層谷(だんそうこく)を一望できる場所が、南信濃村の青崩峠(あおくずれとうげ)なのだそうです。参照:青崩峠 - 飯田市ホームページ

 

 

青崩峠

場所:長野県飯田市南信濃八重河内

座標値:35.254039,137.911184

Google map

 

中央構造線の遠山谷があるふきんは、どのような地形になっているのでしょう?大鹿村中央構造線博物館ホームページに掲載されている図を参照してみます▼

この図からは、中央構造線の西側には、いまから1~0.25億年くらい前の地質、東側にはいまから1億年くらい前の地質がひろがっていることがわかります。比較的、西側のほうが新しい地質であることがわかります。日本列島は、太平洋側からおしよせてくる付加体(ふかたい)で、土台の大部分が構成されています。だから太平洋側になるほど新しい地質があることがわかります。

 

さらに遠山谷ふきんの地質を、さらにくわしく地質図naviで確認してみます▼

中央構造線より西側には、花崗閃緑岩、トーナル岩、片麻岩、花崗岩、泥質片麻岩起源マイロナイト、低P/T型広域変成岩、黒雲母帯、閃緑岩、石英閃緑岩などがあります。ピンク色や赤色など暖色系で示された部分です。

 

いっぽう、中央構造線より東側には、ジュラ紀・白亜紀の付加体、石灰岩、砂岩・泥岩交互層、変性玄武岩、高P/T型広域変成岩などがあります。灰色や緑色、青色など中間色や寒色系で示された部分です。

 

前記しましたが、ざっくりと分けると以下の図のように、中央構造線より西側は深成岩、東側は堆積岩で構成されている割合がおおきいことがわかります。

愛知県側の深成岩にはトーナル岩、マイロナイト、低P/T型広域変成岩など聞き慣れない岩石が含まれています。これらの岩石も含めて観察できる場所が、大鹿村中央構造線博物館です。

 

参照:【詳細解説】大鹿産岩石標本 | 大鹿村中央構造線博物館

 

念のために、トーナル岩、マイロナイト、低P/T型広域変成岩について調べてみます。

 

トーナル岩

トーナル岩は深成岩である花崗閃緑岩(かこうせんりょくがん)の一種で、通常、花崗閃緑岩はアルカリ長石という鉱物がよく含まれるそうですが、アルカリ長石があまり含まれていない花崗閃緑岩がトーナル岩と分類されるようです。参照:トーナル岩 - Wikipedia

マイロナイト

マイロナイトは、地下深くでできた岩石が、高温高圧の環境下で、ゆっくりと塑性変形してできた岩のことです。塑性変形というのは、「形がもとにもどらなくなった変形」ということです。

 

参照:マイロナイト - Wikipedia

参照:弾性変形と塑性変形 | 株式会社新日本テック

 

低P/T型広域変成岩

低P/T型広域変成岩とは、圧力が低く温度が高い環境下で別の性質をもつ鉱物へ変化した岩石ということです。マグマの熱などにより限定的な場所で、このような変成作用をうけるのではなく、何10km、何100kmにもわたって変成作用をうけるためにに「広域」という文字が含まれています。

ということは、「低P/T型広域変成岩」は、大陸プレートの浅い部分でおこる造山活動内で、高温・低圧力環境下で変成された岩石だと考えられます。