JR山陽本線で、門司駅から下関駅へと向かう電車内の電気が一度消え、数秒後にふたたび電気がつくという現象が起きる…という記事をご紹介しました(参照:【JR 山陽本線】どうして関門トンネルに入るまえ車内の電気が消える?)
この記事を書くために、本州と九州を隔てる関門海峡で、電車がどのようにその下をくぐっているのかを調べてみました。すると、電車と新幹線とで走っている経路がずいぶんと違うことがわかりました。
どうしてこのように、離れた場所にそれぞれの線路が走っているのでしょう?なによりも、どうしてこんなにも電車と新幹線とでトンネルの長さが違うのでしょう?その答えが『九州の鉄道おもしろ史』P107-110に紹介されています。
電車と新幹線とでは、線路勾配の規定が違うからです。
国鉄〔1987年にJRに事業を継承〕の線路の場合は1000m水平方向へ進むと、垂直方向へあがる高さは35m以下にしないといけない(35‰〔パーミル〕以下)という決まりがあったそうです。新幹線の線路の場合は、速度を優先するために15‰以下という決まりがあります(参照:『九州の鉄道おもしろ史』P107,109)
この決まりに基づいて、関門海峡をくぐるトンネルをつくるには、電車の場合は約3.6㎞、新幹線の場合は約18.7㎞の長さが必要でした。
18.7㎞ものトンネルをつくるためには、電車の従来の駅である「下関駅」-「門司駅」間の約6.2㎞だけではとうてい距離数が足りません。
そこで、新幹線停車用の駅として本州側は「長門一宮(ながといちのみや)駅」、九州側は「小倉駅」を設定し、この二つの駅付近にトンネルの出入り口を造りました。※「長門一宮駅」は「新下関駅」に改称されました。
そうすれば、トンネルの長さが18㎞以上に設定することができ、勾配も15‰以下となります。わざわざ新幹線の線路がややS字状にカーブして、やや遠回りのような軌跡を描いているのも、距離数をかせぐためだということが想像できます。
実際に造られた新関門トンネルの長さは18713mで、勾配は18‰となりました(参照:wiki-新関門トンネル)。18‰だと規定されている「15‰以下」の範囲外となってしまいます。しかし、新関門トンネルは特例として認定されたそうです。
私がまだ車を所有していない頃、本州から九州へ帰郷するとき、新幹線を利用していました。新関門トンネルをはしるとき「長いトンネルだなあ、いつも九州にはいるときは外の景色がみれないなあ」などと、ぼんやり感じていたのを思い出します。
こうして調べてみると、ほんとうに必要最小限の距離でトンネルを造ったのだということがわかります。