『秋月街道をゆく(秋月街道ネットワークの会編)』P.50、「猪膝宿」の項目に「こづきの神様」という神様の名前がでてきます。「こづき」?とは聞きなれない言葉です。ちなみに、猪膝宿という地区は福岡県田川市猪国にあります。「こづきの神様」は福岡県田川市宮尾町という地区に祀られているそうです。
同書籍には”宮尾町や付近の人々が呼ぶ「こづきの神様」の小堂がある。直進すると春日神社に至り、岩戸神楽で有名である”と紹介されているだけなので、どういった神様なのかわかりません。
もしかしたら、この神様が祀られているお堂にいくと、案内板かなにかがあるかもしれないと思い、ひとまず現地を目指しました。
下の写真の道が「秋月街道」です。この路地は、メインの秋月街道から一部分岐して西方向へ約80mほど進んだ場所です。この路地は、メインの秋月街道から分岐して、「逆コの字型」をして、再びメインの秋月街道へと合流しています。
場所:福岡県田川市宮尾町
路地の脇、すこし高くなっていてフェンスに囲われた区画に、小さなお堂が建てられています。
お堂のなかには三角形の自然石が祀られています。石の表面には「〇のなかに一」と刻まれた不思議な記号のような印が刻まれています。
付近には案内板などはなく、この「こづきの神様」が何の神様なのか、わからずじまいで帰路につきました。
帰宅して、この記事を書くにあたり、あらためて「こづきの神様」についてネットで調べてみました。
すると「まほろば・どなり」という、徳島県阿波市土成町のことをご紹介されているブログで「こずきの神さん」が記事に書かれていました。
咳を止めてくれる神様、特に子供の咳、夜に咳こむ時、などに霊験あらたかといわれている。また“こづき”の名称から、粉好き(こずき)、子好き(こずき)な神であるともいわれる。そういうわけで、まつるものとしては、麦粉、ハッタイ粉などがよいとされている。また、子供が好きなので、秋の収穫が終わった頃に、子供相撲を奉納 したとのことである(岩脇)。これは、当時、咳で苦しむのが主として子供であったこととも関係していると思われる。現在のように抗性物質等の薬が出る前は、風邪、百日咳などが流行すると生命にかかわることもたびたびであったので、咳を止めて欲しいという願いは切実なものであったに違いない。
「せきどめ」の神様だと紹介されています。もともとの史料は、おそらくこちらの論文のようです。
参照:阿波学会研究紀要 郷土研究発表会紀要第31号
山の神を中心とした小祠信仰
https://library.bunmori.tokushima.jp/digital/webkiyou/31/3119.html
福岡県の他地域にも「せきどめ」の神様を以前に、3基みつけることができていました。
街なかに祀られる「おしろい地蔵」 福岡県北九州市戸畑区天籟寺 - 日々の”楽しい”をみつけるブログ
枝光八幡宮境内の中臣神社に祀られる「咳の神様」 福岡県八幡東区諏訪 - 日々の”楽しい”をみつけるブログ
咳の病気を治す石 福岡県中間市下大隈 - 日々の”楽しい”をみつけるブログ
「こづく(こずく)」という言葉は、香川県高松市の方言で「せきをする」という意味があるそうです参照。
いろんな場所で「せきどめ」の神様がまつられているのを不思議に思っていました。現在では、「咳をする」というのはあまり重大視するような病気ではないように感じます。しかし医療がまだ現代ほど発達していない時代では、こじらせると死んでしまうかもしれないと、いまよりも恐れられていた病気だったのかもしれません。