日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

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生存戦略としての「逃避」

参照:『左川ちか詩集』川崎 賢子編.岩波文庫.P164-166

 

「風が吹いてゐる」

 

暗い庭を
賑やかに笑ひながら
行列が通つたあとのやうに
ゆられる樹木は
誰に話しかけようとしてゐるのだ

 

見えない足音が
遠くの声のやうに
白日の夢をかはかし

 

氷の上で
私の影を踏みつけてゐる

 

外でははげしく
昼が吹き消された
鷗は嘴をまげ
むらがる波から
あたたかい言葉を集め
ランターンの中へ
逃げ込んでしまつた

 

人々は春を待ち
失つた時刻を求め
彼らの瞳のなかへ

 

もう一度
鷗の帰るのを望むだらう。

 

冷たい風が吹き、氷の上でつらい思いをしたとき、カモメは冷たい波から逃げて、あたたかいランプ(ランターン)の中に入る。「逃げるのは弱いから」と考えてしまうが、仕組みとして考えると、これは自分が生き残るための正しい作戦である。

 

人の心と体を「速く走れるけれど、熱を冷ますのが苦手な車のエンジン」に例えてみる。大変なことがあったとき、無理をして走り続けると、エンジンは熱くなりすぎて、ある日、急にプツンと動けなくなってしまう。カモメがあたたかいランプに逃げ込んだのは、完全に動けなくなるのを防ぐために、意図的に休むスイッチを押した、と考える。

 

完全に傷つくまえに、毎日でもいいから逃げこむ。これを日常のルールにする。

 

限界がきて倒れるまでがまんするのではなく、まだ元気があるうちに、安全な場所へ避難する。これは、機械が壊れてから修理するのではなく、壊れないように毎日メンテナンスをすることと同じである。

 

まわりの問題やトラブルを、全部背負い込むと、心のエネルギーをすぐに使い切ってしまう。使いすぎたエネルギーを元に戻し、気持ちを落ち着かせるためには、ランプの中のような、誰にも邪魔されない「空っぽの静かな時間(余白)」が必要である。

 

安全な場所でしっかり休んで熱を冷ませば、心は自然と元の元気な状態に戻っていく。逃げることは、歩くのをやめてしまうことではない。明日も少しずつ歩き続けるための、大切な準備である。何度でも安全な場所へ逃げて、深呼吸をしてから、また外の世界へ向かえばよい。