最近、やっとわかってきたことがあります。それは、各地の郷土史について詳しく知るには、市史とか町史とか、村史といわれる本を調べると良いということです。これらの本は、地元密着の詳細な情報が掲載されています。
図書館の郷土コーナーに保管されてあるこれらの本は、分厚くて、見るからに重厚感がただよってきており、近寄りがたい印象を抱いていました。以前に「〇〇町史」という本を試しに開いてみたところ、古文のような難解な文章がずらずらっと書かれており、内容を理解することだけでも大変でした。
しかし最近、調べものをするとき、わたしの住んでいる地域や、その周辺の町史などを、ちょくちょく開いてみる機会がありました。そうすると必ずしも難解な文章だけで書かれているわけではないということがわかってきました。それらの本がつくられた年によって、文章の読みやすさも変わってくるようです。
昭和に作られたものだと昔風の文体で読みにくかったり、平成になって作られたものであれば、わたしでもスラスラ読める表現で内容が書かれていたりします。
そんななか、『北九州市史(民俗)』(平成元年10月1日発行)を手に取ってみると、分かりやすいうえに、北九州各所の伝承や文化財などの情報が詳細に紹介されていました。庚申塔の場所を記載する項もあります。
庚申塔の一覧表などわたしの欲しい情報は、このような本に記載されているケースの多いことがわかってきました。図書館では市史や町史などは貸し出しが禁止であることがほとんどです。そのため、ほしい情報のページをコピーをすることになるのですが、かならずコピーをとるのには、図書館のカウンターに申請書を提出する必要があります。
わたしが欲しい情報は本のなかにたくさんあり、そのつど申請書を提出するのは、なかなかおっくうです。そこで、思い切って購入することにしました。では、どの地域の本を購入しようか?
古い文化がのこっていそうな地域である、若宮町史や直方市史などを手に取ってみましたが、最終的に地元である『北九州市史(民俗編)』を購入することにしました。
ではどこで購入できるのでしょう?周囲の詳しそうなかたに聞いてみると、だいたい市役所や区役所などで購入できるのでは?という返答です。念のためにネットでも調べてみると、北九州市史(市政編、経済編)に関しては、北九州市立文書館(福岡県北九州市小倉北区大手町11−5)で購入することができそうなことがわかりました。北九州市ができてから50周年となるために、それを機に、2018年に北九州市史が新修されたそうです。
ただ、わたしが購入したいのは北九州市史(民俗編)です。在庫があるのでしょうか?実際に北九州市立文書館へ行ってみました。担当のかたに聞いてみると、文書館では市政編、経済編は在庫があるとのこと(2019年1月時点)ですが、それ以外の北九州市史は別の場所で購入ができるとのことでした。
その場所は、リバーウォーク北九州店 5Fにある「芸術文化振興財団」です。リバーウォーク(福岡県北九州市小倉北区室町1丁目1−1)は、わたしのなかでは「20代くらいの若者がいくおしゃれな商業施設」というイメージがあったので、このような場所で市史が売っているとは思いませんでした。
「芸術文化振興財団」にさっそく行ってみると、外観は事務所の様相で、「ここにほんとに入っていいの?」と気おくれしてしまいました。扉はすりガラスのため、中は見えません。ただ電気はついているので営業はしているようです。
勇気をふりしぼって中へ入ってみました。中は事務机が整然と並べられており、職員さんたちが机に向かって熱心に仕事をされていました。はじめは私たち(妻もみちづれ)が入ってきたことに、職員さんたちは気づかないくらいでした。
「すみません」と小声で、近くの職員さんに話しかけると、みなさんがびっくりしたように、一斉にわたしたちに視線を向けます。こんなに注目をあびるとは、こちらもびっくりしてしまいました。しかし、北九州市史を購入できることを聞いて来た旨を話すと、とても丁寧に対応をしていただけました。
職員さんの話によると、市史を購入する人はとても珍しいそうです。ときどき学芸員さんが来ることがあるものの、わたしたちのような一般人が市史を購入するとは…と驚かれていました。しかし在庫があってよかったです。
ちなみに『北九州市史(民俗編)』は5000円でした。大型の書店でも、ここまで詳細に北九州の民俗について書かれている書籍はありませんでした。とても満足のいく買い物でした。