日本ではじめて立体交差駅ができたという珍しい歴史をもつ折尾駅(おりおえき)。2021年(令和3年)1月3日に、JR折尾駅の新駅舎が開業しました。折尾駅をふくむ折尾地区周辺において大規模な整備が、2006年(平成18年)からおこなわれています。この整備は2025年(令和7年)までには完了する予定で、この事業の一環として折尾駅関連施設のリニューアルもおこなわれています(参照:北九州ホームページ 折尾地区総合整備事業について)。
場所:福岡県北九州市八幡西区堀川町
折尾駅が新駅舎となる前、とても複雑な構造の駅でした。駅ホームが立体交差しているという複雑怪奇な構造をもっていたのです。なぜそのような構造となったのかは、「複雑な歴史をたどったJR折尾(おりお)駅」という2021年2月17日の投稿でご紹介しました。
複雑となった理由をざっくりというと、異なる鉄道会社がひいた線路が交差していて、のちの時代に2つの鉄道会社が折尾駅をひとつにまとめたため…ということになります。もともとは2つの鉄道会社が、それぞれ折尾駅をひとつずつ作っており、それを合体させたために立体交差した駅が誕生したのですね(参照:『九州の鉄道おもしろ史(弓削信夫著)』P.72-73)。
その折尾駅がリニューアルされ、複雑な構造がシンプルとなったそうです。その新駅舎がどんな感じになっているのかみてみたいと思い2021年2月20日にいって見てきました。今回の記事では、そのときに撮った写真と、駅の様子をご紹介したいとおもいます。
↓下の図は2021年2月末時点のおおまかな折尾駅配置図です。これをみると、現在でも複雑な印象をもちますが、リニューアルされる前はもっと複雑にからみあった配置となっていました(参照:レールメカの巣 ルポ探 1.折尾駅の現況))。
路線やホームが折尾駅内で交差していないために、乗り換えがスムースにおこなえるというわけです。新しい折尾駅では3番~7番のホームはすべて2F部分にあります。そのため、乗り換えの際は通常の駅のように1F部分に降りて、目的とするホームへと移動してあがればよくなりました。迷路のような構内をくねくね移動しなくてすむようになったわけです。
↓こちらが新駅舎の正面口です。以前の駅舎のように東口や西口、北口などの複数の入口はなくなりました。折尾駅に出入りできる場所は、正面口ひとつだけです。この駅舎は大正5年当時のものを再現しています(参照:PDF)。
駅舎はあたらしくなったとはいえ、駅周辺の環境はまだまだ改修している途中で、上の写真のように、工事用の鉄壁が駅前にせまっています。現在工事中の駅前は、平成24年公表のイメージ図を参照(PDF)すると、10数台の自動車が停められる駐車場が広場の中央部にあり、その周囲をぐるっと自動車がまわれるロータリーになるようです。
↓下の写真は折尾駅新駅舎 改札口前の待合室です。
リニューアルされる前の折尾駅にもあった「化粧柱」と、その柱のまわりを囲むベンチが新駅舎でもとりいれられています。旧駅舎で使用されていたものを、できるかぎり再利用しています(参照:PDF)。天井の格子状の模様や、装飾されている箇所の緑色などは旧駅舎のものを再現しています。
改札口前の待合室から、改札口方向へ歩をすすめてみます。改札口からホームまでの区間はじつに現代的な駅になっています。
↓下の写真は、改札口をぬけて駅構内にはいった場所の風景です。1F部分です。4番・5番のりばにあがるための、ガラス張りのエレベーターが構内中央部に設置されています。エレベーターから、こちらへむかって二本の平行線がのびてきていますが、これは折尾駅がリニューアルされる前の「筑豊本線」跡をあらわしています。
レール跡をあらわす線の一部には、↓下写真のように、実際使用されていた筑豊本線と鹿児島本線のレールが展示されています。
折尾駅は「筑豊本線」と「鹿児島本線」とが立体交差している、利用者にとってはややこしい駅だったことが表現されていると考えられます。
下の写真は4番・5番のりばへとつづく階段です。階段の両壁がレンガで表現されています。折尾駅の旧駅舎にも、一部レンガでできた壁がのこされていました(参照:レールメカの巣 ルポ探 1.折尾駅の現況)旧駅舎にのこされていたレンガ壁の箇所は、アーチ型のトンネルとなっており、電灯がついていたとはいえ、昼間でもすこし薄暗く、レンガの重厚さもくわわり、なんとなく薄気味がわるかった記憶があります。わたしが子どもだったころ、折尾駅の印象として強くのこっています。
下の写真は4番のりばから東方向(小倉方向)を向き写真をとったものです。ちょうど貨物列車が3番ホームにはいってきたところです。この貨物列車は、これからおそらく筑豊方面へと向かうはずです。
下の写真は4番のりばから西方向(博多方向)をむいて写真をとったものです。写真左側に3番ホームがみえます。ややこしくて、わたしはよく把握できていないのですが、この3番ホームにはいってくる電車の一部が「福北(ふくほく)ゆたか線」をはしる電車だと考えられます。
あたまを整理するために、もういちど2021年2月20日時点の折尾駅の略配置図をみてみます。
2021年2月時点では折尾駅新駅舎の東側約100m地点に「鷹見口」があり、ここにAのりば・Bのりばというのが残っています。Aのりば・Bのりばには「中間駅」から「黒崎駅」へとのびる「短絡線」がはしっていました。
これは筑豊でとれた石炭を門司港へとはこぶためにつくられた「短絡線」です。この短絡線も旅客中心の時代になると、「折尾駅」で乗客を乗降させてほしいという要望にこたえざるをえなくなり、「短絡線の折尾駅」をつくりました。こうやって折尾駅舎とは離れた場所に「鷹見口のある折尾駅」がつくられました。
現在は、短絡線は「福北ゆたか線」として機能しているようです。しかし、北九州ホームページの資料「折尾駅周辺連続立体交差事業(PDF)」をみてみると、福北ゆたか線(短絡線)はいずれ、リニューアルされた折尾駅の3番ホームを使用することになるようです。そして福北ゆたか線が停まっていたAのりば・Bのりばもいずれなくなってしまうと考えられます(参照:鉄道の切り替え手順イメージ図(PDF))。
折尾駅に入ってくる路線のすべてが、4年後の2025年には、すべて高架となります。
新しい折尾駅舎の東側に、おおきな2つのロータリーができ、そのロータリーにはさまれる形で大きな駅商業施設がつくられるのではないかと予想されます(参照:折尾地区総合整備事業による折尾駅周辺のまちづくりイメージ動画)。
以下は2021年2月20日時点の、折尾駅周辺写真です。記録として掲載してみます。