遠賀川―流域の文化誌 (海鳥ブックス (6))という書籍を見ながら、遠賀川に関連した史跡を探訪しています。今回はその書籍のP42…「石塔の謎」という項目に「トリ庚申塔」というものが紹介されていました(P44)。
「トリ庚申塔」の「トリ」とは?
「トリ庚申塔」は、若宮町から飯塚市にかけて存在する庚申塔なのだそう(P44)。
「トリ」の部分はP46~47の表をみると…取理、取鳥、取里、鳥取…というようにバリエーションがあるようです。
しかしどうして「トリ」という文字を庚申塔につける必要があったのか?鳥に関することがあるのか?鳥取県に関することがあるのか?
いくつかの説が同書に挙げられていますが、決定的な説はないようで、どれも”可能性がある”ということなのだそう。それらの説を以下に挙げてみます。
鳥取県の鳥取庚申さまに願いごとを書いて送るとかなったという言い伝えから、それにあやかり、鳥取という文字を刻んだ
猟で獲った鳥の供養の目的のために刻んだ
庚申の主尊である青面金剛の使者の鳥を刻んだ
収穫のトリ入れにかけて…豊作祈願の目的で刻んだ
庚申信仰で満願成就のしるしとして「とりあげ庚申」を「トリ庚申」とした(豊前歴史風土記 桐畑隆行著)
「鳥申(とりさる)」という語呂から「取り去る」という意味にかけて、病気や災厄をまぬがれる祈願目的のために刻んだ
伊久志神社のトリ庚申塔
以上、ご紹介したような「トリ庚申」。そんな謎の多い庚申塔を求めて福岡県の宮若市へ行ってみました。
場所:福岡県宮若市山口 伊久志神社
座標値:33.747000,130.601431
遠賀川―流域の文化誌 (海鳥ブックス (6))のP47表2「トリ庚申石塔関係一覧表」で、伊久志神社の境内に「トリ庚申」のひとつがあることが紹介されています。
伊久志神社は田んぼのなかにぽつんと祀られていました。田んぼのなかの小道を通って神社には行くことができました↓
鳥居をくぐってすぐ左側に目的としている庚申塔が祀られていました。庚申塔は三基祀られており、そのうちの一基が「トリ庚申」でした。
↓裏側から見るとこのような感じ。この写真だと…こちらからみて一番左側の一番小さな石塔が「トリ庚申」でした。
↓その庚申塔を見てみます。
とても浸食がすすんでおり、「取庚申」という文字がかろうじて確認できます。
遠賀川―流域の文化誌 (海鳥ブックス (6))P47では「取タリ庚申」と刻まれる…紹介されていますが、どうも「取庚申」とのみ刻まれているようです。
この庚申塔の隣には、すこし背の高い石塔が祀られており…
石塔の正面に「庚申祠建立」、石塔に向かって右側面に「元禄十二年」…
左側面に「卯九月吉日」の文字が刻まれていました。
もう一基、笠付の石塔があったのですが、こちらはほとんど文字を読み取ることができませんでした。