日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

めずらしい理由で天井川になった川~木津川支流~ 京都府木津川市

どうして木津川を調べようとおもったのか?

地形と日本人』,金田章裕著,P.80-114に、「堤防を築くと水害が起こる」という章があります。この章のなかに天井川について説明された箇所があり、天井川の代表的な河川として、三重県と京都府をながれる木津川(きづがわ)が例としてあげられています。

 

昔、愛知県名古屋市にすんでいたことがありました。名古屋から三重県や京都府へは、車で行ける距離だったので仕事がやすみのとき、ときどき足をはこんでいました。でもその当時は、「ただ遠くの街にいく」というだけの遠出だったのであまり印象にのこることはありませんでした。いま思うと、体力があまっていた20代のとき、漫然とひとり旅行をしていたのがもったいなかったなあと思います。

 

現在、それぞれの土地の風習や地質、地理などに興味がわいているので、もし中部地方へいける機会ができたとき、木津川周辺の天井川もみてみたいと思って、調べてみようと思いました。

 

地形と日本人』によると、木津川中編の天井川のできかたは、通常のできかたとくらべると、ちょっと特殊であるということです。これも調べてみたいと思ったきっかけとなりました。

 

木津川支流が天井川になった変わった経緯

土砂が堆積することで、川底がまわりの地面よりも高くなった川を天井川といいます。

 

参照:国土技術政策総合研究所.天井川

 

木津川に流れ込む支流の川は天井川が多いのですが、そのできかたが、上記のようなできかたではなく変わった理由で天井川となりました。

 

木津川は堆積力の大きい大河川のために、河床が高くなりやすい性質をもっています。木津川には複数の支流があります。木津川本流の河床が高くなると、それに伴い、堤防も高くする必要があります。本流の堤防を高くすると、本流にながれこむ支流の河床を高くしなければなりません。本流のほうの河床が高いと、支流の水が本流へ流れこまなくなるためです。

 

このように本流の流れが逆流して氾濫することを、内水氾濫というそうです。

 

よって、本流の河床を高くすると、それに伴い、支流の堤防も高くする必要がありました。その結果、木津川の複数の支流が天井川となりました。

 

このような、めずらしい川は福岡県にはないと思われます。

 

下は地点(34.786168,135.813413)のストリートビューです。川の流れの下側に鉄道がはしっているのがわかります。

 

場所:京都府木津川市山城町綺田

 

木津川支流の様子を地形図でみてみる

地形図をみてみると、木津川の東側に比較的おおくの天井川が確認できます。

 

天井川となっている場所を、国土地理院地図の「自分で作る色別標高図」という機能をつかって確認してみます。標高で色を区別すると、とてもわかりやすくて感動をおぼえます。まるで植物の根っこのように、太い本流に細い支流が何本も流入していることがわかります。

 

連続堤と不連続堤

堤防はひとつづきになっているもの(連続堤)と、そうでないものがあります。そうでないものということは、堤防がひとつづきになっていないということですが、例えば「霞堤(かすみてい)」というものです。

 

不連続堤(霞堤)だと天井川になりにくい

霞堤だと、本流のながれとは逆方向へ川の水をわざと流れさせます。その流れに伴って土砂も川の外へと流されてゆきます。水が逆流してきた土地は水につかってしまいますが、同時に上流から流れてきた土砂も流れ込んできます。そのため上流から流れてきた土砂が、それほど本流の川底に溜まりにくいのです。

 

霞堤は、川の力を抑え込むのではなく、受け流すという形で洪水被害を抑えてきました。

 

連続堤の利点と欠点

いっぽう、連続堤だと大水時、霞堤のように堤防外に水がでることはありません。大水の場合でも堤防がくずれなければ農地や人家に被害がでることはありません。しかし、上流から流れてきた土砂が、堤防内を流れつづけ、いずれ河床に溜まることになります。そのため、連続堤だと大水がおきるたびに河床が高くなってしまいます。これが連続堤のデメリットです。

 

天井川の代表例【芦屋川;兵庫県芦屋市】

 

参照:国内の代表的な天井川

 

どうして「堤防を築くと水害が起こる」のか?

『地形と日本人』,金田章裕著,P.80-114に紹介されている、「堤防を築くと水害が起こる」という章を読んで、木津川のことを調べました。そもそも「堤防を築くと水害が起こる」という言葉は逆説的ですが、どうしてそういえるのかよくわかりませんでした。よくよく本を読み込んでみるとわかりました。

 

つまり、”連続堤となった堤防は、万が一破堤した場合に、大水害に結び付きやすい”という意味を指すということです。

 

参照:『地形と日本人』,金田章裕著,P.90

 

 

現在、木津川の河床は低くなってきている

木津川の下流に淀川が位置します。この淀川の川幅をおおきくしたり、河床にたまった土砂をとりのぞいたり、カーブをえがいていた部分を直線にしたりしました。その結果、淀川が流れやすくなりました。淀川が流れやすくなったことで、上流に位置する木津川の水も流れやすくなり、土砂が溜まりにくくなったと考えられます。木津川自体もおそらく淀川と同様の工事がおこなわれてきたため、木津川の河床も低くなってきているといいます。

 

参照:PDF.木津川筋の河相と河床の変化,P.57-58

参照:PDF.木津川下流域の河床変動と土砂収支

 

 

九州にも天井川はあるのか?

佐賀県に天井川があるそうです。

 

参照:筑後川河川事務所.佐賀導水路.河川の流域が狭小で、天井川

 

標高を色でわけた地形図で筑紫平野を確認してみると、神埼市に天井川の傾向がある川がみられました。城原川、田手川です。川の下を道路がはしっているというようなことはないようですが、周囲の土地よりも川の高さがやや高くなっていることがわかります。

福岡県から比較的、ちかい場所なので、機会をみつけて訪れてみたいです。