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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

地形図から暗渠(あんきょ)の出口を推測する 福岡県北九州市若松区赤崎町

2020年12月17日の記事『旧若松市をうるおしていた貯水池にのこる史跡 福岡県北九州市若松区大字小石』で、史跡「菖蒲谷(しょうぶだに)貯水池の取水入口」をご紹介しました。北九州市若松区が、まだ若松市であった時代、若松市へと水を供給するためにつくられた菖蒲谷貯水池。この貯水池から水を供給するための施設が、下の写真の取水入口です。1925年(大正14年)頃につくられた施設です。

場所:福岡県北九州市若松区大字小石

座標値:33.909985,130.783110

 

現在、この施設は使用されておらず、菖蒲谷貯水池から流れる水は北側にある響灘へと移動しているようです。地形図で、その流れを確認してみます。

菖蒲谷貯水池の堰堤(えんてい)わきを通る水路は東へ進み、棚田町という地区で消失しています。菖蒲谷貯水池からの水路は760mほど進み、棚田町で暗渠(あんきょ)となっているのです。

 

この暗渠が、どこへむかっていっているのかわからなかったのですが、『若松史』P.28を拝読していて、暗渠の行先のヒントが掲載されており、「もしかしたらここへ行っているのではないか」という予測が立ちました。

 

それは「赤崎川」という川です。下の座標値は、暗渠がふたたび「川」となって地上にでてきている地点です。

 

場所:福岡県北九州市若松区赤崎町

座標値:33.919859,130.789629

 

『若松史』P.28には赤崎川の説明文が紹介されており、”中畑から小石海岸へ流れる川、赤崎川。かつてはホタルも飛んだ風情のある河であったが、周囲の宅地化がすすみ、暗渠となって姿を消した。”とあります。

 

赤崎河は”中畑”から流れてくると説明されています。まさに中畑というのは菖蒲谷貯水池がある場所です。

 

地形図で確認してみます。暗渠の入口から北へ830m地点に川が出現している場所があります。

暗渠の出入り口は直線の道路で結ばれています。この道路の下が暗渠となっていると考えられます。

 

地形図をさらに詳しく見てみます。地道な作業ですが、地形図の等高線に線を手作業でかいていきます。意外に、地形図を細かく見ていくと市街地にも等高線が描かれています。市街地の等高線は道路や住宅の線の影にかくれてしまっているので、なかなか骨のおれる作業です。

しかし、こうやって等高線を浮きだたせると、たしかに谷部分に川がながれていることがはっきりとわかります。青の点線部分は暗渠予想部ですが、いちばんの谷部をほぼ通っていることがわかります。

 

地形図に陰影をつけ、低い場所ほど青く表示されるようにしてみます。すると菖蒲谷貯水池のある中畑町から棚田町、暗渠出口のある赤崎町にむかって、ゆるやかに傾斜する谷であることが感覚的にわかります。

暗渠になる前は、赤崎川は青点線部をとおっている川だったのでしょう。

下の写真が、暗渠の出口部を写したものです。暗渠の上に二車線の道路が覆っていることがわかります。

場所:福岡県北九州市若松区赤崎町

座標値:33.919859,130.789629

 

暗渠出口部

暗渠出口全容

暗渠とは反対方向(北部)を撮った写真

実は、暗渠の出口として、もうひとつの候補で「福岡県北九州市若松区深町」という場所に足をはこんでいました。地形図で示すとこの辺りです。しかし、深町の暗渠出口は菖蒲谷貯水池からの水がながれてきているとは考えにくいと思いました。

というのは菖蒲谷貯水池と、深町の暗渠出口とをむすぶ直線上には丘陵地があり、約4mもの高さを水があがっていかなければならなくなるためです。

参照:『地形図を読む技術 新装版』(山岡光治著)P.150-155