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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

「遠賀川改修記念碑」訪問と 北九州でも起こるかもしれない地震被害について

遠賀川と彦山川とが合流する地点に、「遠賀川改修記念碑」と刻まれた大きな碑がたてられています。この碑が、どのような経緯で建てられたのかを調べてみると、遠賀川がどのような存在であるのかがわかってきます。

場所:福岡県直方市殿町

座標値:33.742122,130.731843

 

遠賀川は、明治から平成までの約150年間で、合計17回、大きな洪水がおきました参照。この17回の洪水のなかで、最も死傷者が多かったのが、1953年(昭和28年)6月25日~30日に起きた洪水です。この年は「昭和28年西日本水害」として記録されていて、九州北部の河川ほぼすべてが氾濫しました。九州全域でいうと、死者・行方不明者1001名、浸水家屋45万棟、被災者数は約100万人にものぼりました参照

 

比較のために、2017年に起きた「平成29年7月九州北部豪雨」の被害を調べると、この年では死者・行方不明者は41名参照:PDF

 

「平成29年7月九州北部豪雨」の後、朝倉市をおとずれたとき、その被害を実際に目にしたこともあり「かなりひどい災害」という印象がつよく残っています。それでも「昭和28年西日本水害」のケースは被害のレベルが違うことがわかります。

 

「遠賀川改修記念碑」は、改修工事が終了した1917年(大正6年)に建てられました。しかし考えてみると、遠賀川が氾濫しないようにと遠賀川の大規模な改修工事がおこなわれたにもかかわらず、大正時代の改修工事後、昭和・平成で13回の洪水が発生しています。

そのつど、堤防やダム、排水ポンプ場などの建設が1917年以降も、繰り返し繰り返し、行なわれています参照。これらの歴史をみると、いかに遠賀川のような大きな川は、洪水にそなえて工事を繰り返しても、想定以上の災害がいつおきるかわからないことが認識できます。

 

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最近、危機感を感じている災害で南海トラフ地震があります。福岡県において、おおきな地震や津波は、わたしの生きている間ではほとんど経験がありません。地震・津波に対する防災意識は、わたしは個人的に低いと感じています。しかし、北九州市でも震度5前後の地震が、南海トラフ地震で発生する可能性があることを知り、危機感をもつようになりました。

政府の地震調査委員会は13日、国内で可能性のある地震の最新の発生確率(1月1日現在)を公表し、南海トラフで今後40年以内にマグニチュード8~9級の地震が発生する確率を、前年の「80~90%」から「90%程度」に引き上げた。

 

参照:https://www.yomiuri.co.jp/science/20220113-OYT1T50208/

 

40年以内に90%の確率で…ということは、個人的には…”生きている間に必ず遭う”と認識したほうがよさそうです。

 

北九州市の津波被害を想定する

北九州は津波とは無縁のように感じられるのですが、『北九州市防災ガイドブック』P.23~26「津波」のページを参照すると、北九州市でも対馬海峡東の断層や南海トラフでおきる地震によっては津波の被害が生じることが想定されています参照:PDF

地形図Navi」でも、断層がどのあたりを、どのように走っているのか赤色でみることができます↓ これを見ると、九州北側の海のなかや、北九州の内陸部にも複数本の断層が走っていることがわかります。※図の北側に山口県に掛かっている大きな断層がありますが、これは「対馬海峡東の断層」ではないと考えられます。「対馬海峡東の断層」はもっと北側の日本海のなかを走っていると思われます。

 

「対馬海峡東の断層」地震の場合

例えば「対馬海峡東の断層」で、マグニチュード7.4の地震が発生したら、北九州市の八幡東区・八幡西区・戸畑区・小倉北区だと2.0m前後の高さの津波、若松区だと4.6mの津波がくることが想定されています。また、津波の到達時間は、地震発生から約28分ということです。

 

参照:『https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/68475_17477992_misc.pdf』Ⅱ‐31

参照:『https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000957828.pdf』P.24

もし、約4.6mの津波が若松区に来たとすると、どのくらいの範囲で被害が予想されるのでしょうか。国土地理院地図で海抜4.6m以下の土地を赤色で着色してみると以下のようになります。

若松区の北側にある埋め立て地(工場地帯)は、ほぼ全域が赤色です。

 

上の地形図の洞海湾沿岸部を拡大したものが下の3つの地形図です。洞海湾沿岸部で、埋め立てが行われた土地は、ほぼ全域が赤色です。洞海湾入口部(東側)だと北湊、北浜、浜町、本町などが赤色です。

洞海湾の入口(東側付近)

洞海湾中央部

洞海湾の奥(西側部分)

洞海湾の一番奥側(西側)では、湾に注ぐ川沿いで赤色の地域が奥へと伸びています。

 

万が一、「対馬海峡東の断層」で地震がおきた際は、北九州の北側にひろがる響灘はもちろん、洞海湾沿岸部、そして洞海湾最奥の川周辺からはできるだけ離れたほうがよさそうです。

 

「南海トラフ」地震の場合

いっぽう、南海トラフ地震がおきた場合では、最大、北九州市門司区で3.5mの高さの津波が来ることが想定されています。

南海トラフの方角から考えると、おそらく門司区の東側に津波3.5mが来ると想定されるため、下の地形図の西側沿岸部に着目してみます。赤い箇所はほとんどみられず、門司区は土地のほとんどが3.5m以上の土地であることがわかります。前記した、「対馬海峡東の断層」地震での若松区における被害ほど広範囲ではないことが予想されます。

ただ、門司区の東にある柄杓田漁港など、東側沿岸で湾の奥につくられている集落は注意する必要があると考えられます。

 

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過度に怖がっていても意味がないので、震度5前後の地震が近いうちに来ることを想定して、今できることをおこなう必要があると考えます。

 

北九州市防災ガイドブック P19~P22「地震」

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000957827.pdf

 

北九州市防災ガイドブック P23~P26「津波」

https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000957828.pdf