2022年9月3日、大分県の佐伯市に立ち寄った際、「小倉磨崖石塔」を訪ねました。凸凹が取り除かれた岸壁に彫られた石塔群です。
場所:大分県佐伯市弥生大字上小倉
座標値:32.966786,131.836275
故人が亡くなってから100日を目処に行う「百ヵ日供養」や、生前に自分の死後の冥福を願う「逆修」の際に彫られたものです参照。一時期に、いっきに彫られたというものではなく、長い年月をかけて、彫り継がれてきたもののようです。
建立年がわかるものは1326年、1329年、1345年で、おおよそ鎌倉時代に作られた摩崖石塔群だということが想像されます。
訪れた日は、雨量が多く傘をさしながらの見学となりました。摩崖石塔群の奥へいくほど雑草や蔦が生い茂り、進入が困難な状態でした。
摩崖石塔群は下の写真にうつっている集落の裏側にありました。集落裏側は小山となっていますが、この小山の崖に彫られているかたちです。
民家の間の細い路地を通り抜ける必要があります。「摩崖石塔」という看板がでていたので安心して路地を進めますが、なければ他人の家の敷地に入っていくようで冷や冷やします。
摩崖石塔のサイズ、形は様々で、小さいものだと、両手の平に収まるサイズのものもあります。みたところ石塔は宝塔や五輪塔を模したもののようです。
摩崖石塔群は、奥へ行くほど(北側へ行くほど)像の風化が進んでいるようにみえます。北側から南側のほうへ順番に石塔は彫られていったのかもしれません。
↓石塔群の最奥部(最北部)
案内文や大分県観光情報などを参照すると、これら摩崖石塔は高い身分の人々のために彫ったというよりも、近隣の庶民が自身や家族のために彫った石塔なのではないかと想像します。
近辺に駐車場はなかったために、摩崖石塔の北東160m地点にある「弥生町商工会館」駐車場に車を停めさせていただきました。
最後に案内板の内容をご紹介しておきます。
磨崖石塔(大分県指定史跡 昭和二八年四月二十日指定)
この磨崖石塔は、八基の宝塔と大小種々の三十四基の五輪塔からなり、凝灰岩の磨崖面に、塔の正面と側面の一部を浮彫りとして、力強く掘り出されてあり、他に類のない独特の彫法である。
塔を作った年代は、大部分が不明であるが、永い年代にわたって、彫りつがれたものと思われる。年代のはっきりしているものは嘉暦元年(西暦一三二六年)の一基、嘉暦四年の塔二基、康永四年(西暦一三四五年)の塔一基の計四基である。本塔群のもつ特異性は、良く調和のとれた形態の優美なこと、その力強い彫法とであり、薬研彫の梵字とともに、よく鎌倉・南北朝時代の質実剛健の気風があらわれている。なお、前庭地下からは、数点の中世土器類の破片が発掘された。
弥生文化財愛護婦人団