先日、「庚申塔とショケラ」という記事でアップした、ショケラを持った青面金剛の庚申塔を実際に拝観しに国東半島へ行ってみました。
ほんとうにこの庚申塔をみて驚きました。観に行ってよかったと思います。
何に驚いたかというと、まずその精巧さです。そしてショケラもちろんのこと、これまで探した庚申塔では見られなかった四夜叉が刻まれていたということです。
地図:Google マップ
この庚申塔を見つけることができたのは、「国東半島の庚申塔」大分合同エデュカル(2017年発刊)を著した小林幸弘氏が送っていただいた「国東半島庚申塔分布図」です。氏は国東半島の庚申塔を780基探されており、その一基一基の写真を国東半島の庚申塔に整理されています。今回のように明確な目印がない場所にある庚申塔さがしには、直接目印が記された地形図が強力な味方となってくれます。
小林氏は今回の庚申塔についても詳細な解説を「国東半島の庚申塔」で紹介されています。
総高 142㎝
明和六己丑年(1769年)
八月十一日
一面六臂の青面金剛は、法輪、三叉戟、弓、矢、剣とショケラを手に怖い顔をして構え、両脇に二童子を従える。
三猿、二鶏の下段には武器を携えた精悍な四夜叉が配され、そこには躍動感がみなぎっている。
基壇前面には、十八人の発起人の名前が一面に彫り込まれている。保存状態はきわめて良好で、約二五〇年前の秀作を今に伝えている。
ずいぶん昔に造られたとは思えないほど、細かい部分まで残っています。この庚申塔の周囲は杉などの樹々や竹に覆われているため、風雨に直接さらされることが比較的なかったからかもしれません。浸食のされにくい石質の石で造られたからかもしれません。
それにしても、ショケラに直接出会えたことはよかったです。
ちなみに、↓こちらの四夜叉は「くにさき史談 第九集」(くにさき史談会)では次のように紹介されています。
「四句文殺鬼」で、諸行無常=青、是世滅法=赤、生滅滅巳=黒、寂滅為楽=肉色とも言われています。それぞれの夜叉は異なった武器を持っています。
「四句文殺鬼」とはなんなのか?そのままの言葉では紹介されているサイトはなかったので、まずは殺鬼(せっき)を調べると「人を殺し、全てを滅ぼす恐ろしい鬼」「無常をたとえていう語」とあります。
四句文とはなんなのでしょう?四句は「しく」と読むそうで別の言葉で「偈(げ)」というそうです。「偈(げ)」とは「教理や仏・菩薩 をほめたたえた言葉」ということです。
調べてみても「四句文殺鬼」が意味することがはっきりとはわかりませんでしたが、これら四体の夜叉がそれぞれ四句(しく)の意味をもつ鬼ということでしょうか。
「くにさき史談 第九集」で紹介されていた「諸行無常、是世滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」の言葉を続けて訳すと以下のようになるそうです。引用:三法印(お釈迦様基本の説法)
諸行無常(しょぎょうむじょう)…すべての存在は移り変わる
是生滅法(ぜしょうめっぽう)…是がこの生滅する世界の法である
生滅滅已(しょうめつめつい)…生滅へのとらわれを滅し尽くして
寂滅為楽(じゃくめついらく)…寂滅をもって楽と為す
様々なとらわれから解放されれば平安な境地に至るということでしょうか。同サイトによると、これを和訳したものが「いろは歌」とも紹介されています。
ひとつの庚申塔のなかに、こんな教えが刻み込まれているということを想像すると興味深いです。