福岡県田川郡の金田という地区にある稲荷神社境内に「山ノ神」さまがまつられていました。しかし稲荷神社の周囲に山らしい山はありません。一番、稲荷神社から近い山といえば、西南西へ約2.7㎞いった地点にある、標高213mの小山です。
場所:福岡県田川郡福智町金田
座標値:33.675135,130.781611
金田地区にある稲荷神社が、遠賀川へいずれながれこむ中元寺川と彦山川とに挟まれています。川に挟まれているために、標高の低い平地となっています。
でもどうしてこのような場所に「山ノ神」さまが祀られているのか不思議です。
『日本の民俗宗教 (宮家準著)』P.103-104に「祭り」についての記述があります。そのなかで、日本の祭りが春夏秋冬におこなわれている由縁について説明されています。
死者の霊魂は、死後山に行くが子孫の供養を受けることによって浄化して、山の神となる。そして子孫の農耕生活を守るために、春には里におりて、農耕が終わる秋まで里に留まったうえで、ふたたび山に帰る。
春祭りはこの山の神を迎える祭り、秋祭りは山の神に新穀を奉って感謝のうえで山に送る祭りである。一方、六月の夏祭り十二月の冬祭りは盆と正月に先立つ祓(はら)いが、とくに都市において悪厄を胎さんさせる祭りとなったものである
この記述をよむと山ノ神さまは「山の中だけにいる神さま」という わけではなさそうです。山ノ神さまは、もともとはご先祖の魂であり、里と山とを行き来するいわば守護霊としてまつられているようです。
そして、田園がひろがる稲荷神社周囲の環境から、こちらの山ノ神さまは農耕の神様としてここにまつられていると想像されます。