福岡県北九州市の八幡東区に河内(かわち)貯水池という大きな貯水池があります。新日鐵住金株式会社が管理を行う民間企業所有のダムです参照。第一次世界大戦時に増えた鉄の需要にこたえるために1927年につくられ、2020年時点でも現役でつかわれている貯水池です。
この河内貯水池周囲にある、水をせきとめるための堰堤(えんてい)をはじめ、記念碑・建物・橋などにも一貫したデザインがみられます。”一貫したデザイン”というのは、細長く扁平に加工した石をぎっしりとならべ、モザイク状にしあげているデザインです。
これら建造物が『九州遺産(砂田光紀著)』P.10-13に紹介されていたので、いってみることにしました。
こちらは河内貯水池の北端に配置されている「河内堰堤」です。土木学会選奨土木遺産に認定されています。
場所:福岡県北九州市八幡東区大字大蔵
座標値:33.838095,130.810542
おびただしい数の切り石がつみかさねられています。
河内堰堤の上部、歩道となっている箇所です↓ 歩道の欄干部分も扁平の石がぎっしりとつみあげられています。巨大な建築物なのに繊細さが感じられます。
河内堰堤のちょうどまんなかあたりにつくられている取水塔です↓ この取水塔も小さな石が積み重ねられつくられています。出入口や窓枠は長方形ではなくアーチ型となっています。
河内堰堤の南側、山の斜面に設置されている「記念碑」です↓
座標値:33.837388,130.811176
記念碑には以下の文字が刻まれているといいます(『九州遺産(砂田光紀著)』P.11)。
KAWACHI RESERVOIR COMPLETED IN SYOWA 2 1927 DESIGNED AND BUILT BY H.NUMATA M.AM.SOC.C.EM.ADACHI C.E.Y.MATUO ASS'T.ENG
河内貯水池は、沼田尚徳(ぬまたひさのり)によりデザインされ1927(昭和2)年につくられた…ということがわかります。ただ「M.AM.SOC.C.EM.ADACHI C.E.Y.MATUO ASS'T.ENG」の部分が、なんの英語を略しているのか不明でした。この箇所には「アダチ、マツオ」という名前がみえます。
↓こちらは河内堰堤の北西部に位置する「河内堰堤管理事務所」です。
座標値:33.838877,130.809815
施錠された金網に囲われています。門には関係者以外立ち入り禁止の看板が多数設置されていて物々しい雰囲気が感じられます。
円柱形につくられた灰色の建物はまるで要塞のようです。この建物も石をつみあげてつくられたのでしょうか。
最後に、河内堰堤から南西へ1.3㎞ほどの地点にある「中河内橋」をみにいきました↓
座標値:33.829800,130.800460
中河内橋は、河内貯水池沿いをはしる県道62号線のいちぶです。2020年時点では新しい橋(自動車用)のかたわらにあり、中河内橋自体は歩道用の橋となっています。
中河内橋を横からながめると、橋全体が石をつみあげられてつくられているというよりも、土台の橋がコンクリートでつくられ、外側に自然石がはりつけられているようでした。