福岡県の東部。福岡県と大分県をまたぐ英彦山(ひこさん)のふもとに、蛇淵(じゃぶち)の滝という、いかにも伝承がのこっていそうな名前の滝があります。「蛇淵の滝」の正式な名称は「鈴尾の滝」。どうして「蛇淵」という名前がついたのか?その由縁が『新京築風土記(山内公二著)』P.131に紹介されています。
場所:福岡県京都郡みやこ町犀川帆柱
座標値:33.509477,130.956599
その伝承の要点を以下にご紹介します。
・もともと鈴尾の滝には大きな蛇がすんでいた
・ある夏の夜、帆柱の庄屋に美しい娘が訪ねてきた
・娘は蛇の化身だった
(娘の訴え)
・鈴尾の滝の水が少なくなり身を隠せなくなった
・隣の谷である山国の田野尾川にある蛇淵へいきたい
・峠を越える夜食として握り飯をめぐんでもらいたい
・庄屋は娘に握り飯を渡した
・娘は礼をいった
・水に困れば山国の蛇淵を訪ねたら雨をふらせるという
この伝承が残っているために鈴尾の滝は「蛇淵の滝」という名前がつけられたと考えられます。では、この伝承にでてくる、「山国の田野尾川にある蛇淵」とはどこなのでしょう?Googe mapでは「田野尾川」はすぐに調べられます。
田野尾川は、大分県中津市山国をながれる山国川の支流です。『新京築風土記(山内公二著)』P.131では「蛇淵」は”田野尾川沿いに樫の大木があり、その下の渕が蛇淵だった”と紹介されています。
Google mapの航空写真でみてみても、それらしき”渕”はみあたりません。田野尾川の長さをザッと地図上で測定してみると約7.6㎞もあります。この範囲から”樫の大木の下の蛇淵”を探すのは至難の業です。
ただ、その他の蛇淵に関するヒントとして以下があります。
・民話「蛇淵の由来」の筆者は”中詰”という集落におられる
・筆者によると40年ほど前まで蛇淵に雨乞いに来られるかたがいた
・帆柱の「蛇淵の滝」と同様の渕がある
「蛇淵の由来」を書かれた筆者.吉峯睦子氏による話だと、”蛇淵に雨乞いに来られていた”…”来られていた”ということなので、まずは中詰という地区周辺の田野尾川沿いから、「いま大蛇が住む山国の蛇淵」をさがしてみようと考えます。
帆柱の蛇淵の滝周辺はキャンプ場となっており、滝までの行程は↓下の写真のように木道が整備されています。
蛇淵の滝周辺は、川の流れによって徐々に削られ、谷が深くなっていったように感じます。
小規模ではあるものの、宮崎県の高千穂とおなじような谷のできかたに似ていると感じます。帆柱もまた溶岩でできた台地上の土地なのだと予想されます。