2015年、警察庁が発表している山岳遭難者数は3043人。その原因は以下のようになっている。
第1位:道迷い(39.5%)
第2位:滑落(16.5%)
第3位:転倒(15.3%)
警察庁の「平成27年における山岳遭難の概況」では、道にまよわないためには地図読み慣れておくことと、小まめに地図とコンパスで自分の位置をモニタリングすることが大切と説く。地図やコンパスを山の上に持っていってるかたはたくさんいるが、実際にそれを使うかたは、グッと少なくなるのだそうだ。
本書では、遭難の事例を挙げ、その原因を地形図を用いて丁寧に説明してくれることからはじまる。実際に霧に包まれた山中や、雪原で「あれっ、ここどこだっけ?」と恐怖を覚えた僕には、深く心にしみる事例もある。
この本は、地形図の見かたがよくわかる本。実践的で、ここまで細かく、そしてわかりやすく解説してくれている本はなかなかないと思う。
例えば、山歩きでよく利用する「徒歩道」が地形図上で示されているとする。
実際には↓こんな道なのか?
それとも↓こんな道なのか?
はたまた↓こんな道なのか?
どの道が「徒歩道」として表示されるのか?「徒歩道」は一般的には幅員が1.5m未満の道路とされている。だけど実物は確実に「これ!」という絶対確実なものはないようだ。例に示した写真3枚では、一番下の写真以外ふたつは、徒歩道として表示されている。一番下写真の道は、実線で描かれた「軽車道」となっている。
どうして一番上のいかにも車道っぽい道が「徒歩道」で、一番下のいかにも人しか通らないような小道が「軽車道」となるのか?同じ記号で描かれていても、このようにいろんなケースがあることを『山岳読図大全』では伝えてくれる。
この本は大きく分けて、こんな構成になっている
- なぜ道に迷うのか(遭難事例と原因)
- ナヴィゲーション用具
- ナヴィゲーションの基本
- 現在地を把握する
- ルート維持とルートファインディング(コンパスと地形図の使い方と地形の読み取り方)
- プランニングによるリスク管理
特に僕がビビッときたのは、”ルート維持とルートファインディング”の項目。迷いが起きやすい道の実例を示し、道迷いをどうやって防ぐかの具体的方法が書かれている。
実践を重ねることが一番の練習方法だけど、独学では足りていない知識を補ってくれる頼りになる本だと思った。