日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

どうしてたくさんのイルカがうちあげられたのか? 長崎県壱岐市石田町筒城仲触

壱岐の島 南東部に壱岐空港があります。壱岐空港から北北東1.5㎞地点に小さな湾があります。ここに「イルカ供養碑」が立てられています。

場所:長崎県壱岐市石田町筒城仲触

座標値:33.763094,129.789666

 

どうしてイルカを供養しているのか、気になって調べてみたところ、むかしこの浜に多くのイルカが迷い込み力尽きて、絶命したとのことで、このイルカ達を供養するためにたてられたそうです。

 

供養碑の背面にその経緯が刻まれています。1986年(昭和61年)9月16日に200数十頭のイルカが砂津の浜に迷い込みました。このうち128頭が死んでしまい浜にうちあげられました。

どうして、このときこんなに多くのイルカ達が湾にまよいこんだのでしょう?はっきりした原因はわかっていません。調べてみると、クジラやイルカが大量に浜にうちあげられる原因として、海流の変化・海水温の変化・天敵の発生・寄生虫の発生・地磁気の変化などいろんな記事があげられています。

 

このなかで、客観性の高い要因だと考えられるのが「大きな地磁気の変化」です。

 

特定の生物はどうして地磁気の変化で方向感覚がみだれるか?

地球は地磁気によりつくられる大きな磁場に覆われています。磁気圏と呼ばれます。この磁気圏が太陽風の荷電粒子から地球を守っています。

 

しかし太陽風が強いとき、地磁気をみだすことがあります。太陽風の圧力により磁気圏が少し縮みますが、このとき地上でも地磁気が変化します。具体的には地磁気水平分力が強くなります。

 

参照:気象庁 地磁気観測所.磁気嵐とはなんですか?

参照:太陽活動周期リスト - Wikipedia

 

 

生き物のなかには、地磁気を感知して方向を特定しているものがいて、クジラやイルカ、鳩、鮭、ミツバチなどがその例です。これらの生物の頭には、特定の方位を向いたときに高頻度に活動する「頭方位細胞」があるそうです。

 

参照:PDF.生体における地磁気感知と体内磁性物質.杉本光男

参照:名古屋大学.宇宙地球環境研究所.地磁気50のなぜ.生物と磁場

参照:名古屋大学研究成果発信サイト.渡り鳥の脳内にあるコンパス細胞を発見

 

 

2020年2月4日にJesse Granger(ジェス・グランジャー)氏により発表された、以下の論文では、大気中の高周波ノイズによりクジラの座礁が多くなることが示されています。

 

『Gray whales strand more often on days with increased levels of atmospheric radio-frequency noise』

 

参照:PDF『大気中の高周波ノイズが増加したとき、コククジラの座礁が多くなる』

 

同氏がbusiness insiderの記事『クジラが浜に打ち上げられるのは、太陽の活動による磁気嵐が原因』で言及した箇所から推測すると以下のようなことが予想されます。

 

通常より強い太陽風が地磁気水平分力を強くさせる。クジラをはじめとする、頭のなかに「頭方位細胞」をもつ生き物は、地磁気が変化することにより方向感覚がみだれてしまう。

 

地磁気の乱れと海洋生物の座礁との関連

太陽風が強くなる時期は約11年周期で訪れます。そのため地磁気の大きなみだれも、この周期でおきる傾向が強くなると考えられます。

 

冒頭にご紹介した「イルカ供養碑」には、”1986年(昭和61年)9月16日に多くのイルカが迷い込んできた”ことが記されています。1986年は、「太陽風が強くなった時期」なのでしょうか? Wikipedia.太陽活動周期リストを参照すると、ちょうど1986年9月から第22太陽周期がはじまっています。供養碑の年と周期表の年とが合致しています。

Wikipediaの表をみると1986年の太陽周期の次は、1996年が第23太陽周期となっています。では第23太陽周期となる1996年では、海洋生物の座礁がおおくなっているのでしょうか? OPRI海洋政策研究所のホームぺージを参照すると、1996年から鯨類の座礁数が急増していることがわかります。

こちらでもデータの年と、太陽周期表の年とが合致します。

 

国立科学博物館のホームページに「ストランディングデータベース」があります。個々の報告が掲載されていますが、年単位の集計表などはみあたりませんでした。年ごとの集計表をつくると、もしかしたら太陽周期表との関連がみいだせるかもしれませんが、今回は断念します。

 

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もしかしたら、海流の変化・海水温の変化・天敵の発生・寄生虫の発生…などなど、いろんな原因もからみあって、このような事故がおきているのかもしれませんが、「イルカ供養碑」の年と、太陽周期の年が合致していることに気づいたときはおどろきました。

供養碑ふきんからの暁

 

イルカの涙道