福岡県宗像市吉田にある鎮国寺(ちんこくじ)境内に、仏像そのものをあらわしたものとしては、日本で一番古いといわれる石仏があります。「阿弥陀如来座像板碑」といわれる石仏は、鎮国寺本堂から西南西へ約130m地点の山のなかにまつられています。
場所:福岡県宗像市吉田
座標値:33.834106,130.516342
山のなかといっても、「奥の院」へとつづく整備された参道が山中をくねくねと迷路のようにのびています。参道の両脇には多数の石仏が祀られており、これら石仏は四国八十八ヶ所霊場の御本尊と同じ仏様で、四国お遍路をする模擬体験ができる場所になっています。八十八カ所の名のとおり、どうも88基の石仏が札所としてまつられているようです参照。
その札所の、78~80番札所がかたまる場所に「阿弥陀座像板碑」がまつられています。
板碑の上部には阿弥陀座像が薄く浮き彫りされています。阿弥陀様の背後には二重円光背があらわされています。
如来さまの両手の親指と人差し指は輪っかをつくるように結ばれており、胸の前に両手を上げ、掌を見せています。この指のむすびかたは、上品中生来迎印(じょうぼんちゅうじょうらいごういん)といいます参照。阿弥陀経(あみだきょう)を持たないで、お経を読むことができなくても、正しい道理に沿って生きたひとは誰でも浄土に導かれることを示す印なんだそうです。
板碑の下部には、「願主が沙弥妙法」であること、「十二万本の卒都婆」や「仏菩薩像」などをつくった旨の文、「元永二年」つまり西暦1119年につくられたという銘がきざまれています(参照:日本の石仏〈1〉九州篇(賀川光夫編)P.66、80)
この板碑が宗像市にまつられているというのは、九州北部が新しい文化の玄関口である、というひとつの痕跡かもしれません。