鹿児島県の薩摩半島に「鰻池(うなぎいけ)」という火山湖があります。周囲長は4.20 kmと、とても小さな湖です。みかけは湖というよりも貯水池という印象です。その鰻池のほとりに「鰻(うなぎ)」という珍しい名前の、これまた小さな集落があります。この集落は温泉が湧いており、鰻温泉として名が知られています(参照)。
鰻集落の南端に、鰻地蔵板碑と呼ばれる1333年に造られたとても古い板碑が祀られています。その板碑がこちらです↓
場所:鹿児島県指宿市山川成川
座標値:31.226209,130.611804
この板碑には「地蔵」を表す梵字が刻まれています。梵字の刻まれている箇所は白く変色しています。板碑の風化を防ぐために、何か別の種類の素材で補強したのでしょうか。
近くにある案内板には以下のような説明が記されていました。
こうした地蔵信仰が鰻地区に定着したのは、ここに「地蔵」があったためでしょう。今もなお、近隣の住民たちによる信仰があついものがあります。(特に一月十五日・十六日のウナッメイ)
また、この板碑には北朝年号が使用され、この地が北朝方の勢力圏だったことをうかがい知ることができます。
造形的には、関東の板碑によく似て、その古式を伝え、歴史上貴重な資料です。
鰻地区には、地蔵菩薩を信仰する風習が強かったことがわかります。それにしても「一月十五日・十六日のウナッメイ」とは何なのでしょう?こちらのブログ(2013年01月19日 アイガモ日記)を拝読しますと、ウナッメイとは「鰻参り」のことのようです。
鰻地区には火山性の噴気孔がいくつもあり、この世とあの世を繋ぐ入り口があると信じられてきたことから黄泉がえりの伝承が生まれたと言われてます。毎年1月15、16日には死者の供養を願う多くの人が参詣に訪れる<鰻参り>が行われ、その日は黄泉の蓋が開き、故人の魂が自由に往来できるとして言い伝えられています。
たしかに、鰻地区を歩いてみると、各所に硫黄のにおいがする噴気孔があり、蒸気がわいていました。↓こちらが鰻地区を俯瞰した写真です。左奥に見えるのが鰻池です。
とても小さな集落に、このような独特の風習が残っているのですね。その鰻参り(ウナッメイ)では、地蔵菩薩のお札が配られるのだそうで、どうも亡くなったご先祖さまを偲び、敬うための風習のようです。「指宿まるごと博物館-ウナッメイ」では鰻参りの様子が動画でも紹介されています。板碑が祀られるのは、小さな敷地ですが、たくさんの参拝者でにぎわっています。
↑こちらは板碑のすぐそばにあるお堂の内部を写した写真です。中央に祀られるのは、木造の地蔵菩薩です。参拝者は板碑にお参りしたあと、こちらのお堂に手をあわせます。
↓こちらが鰻池です