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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

北九州市戸畑区に咲く「トバタアヤメ」はどうしてこんなに小さいのか? 福岡県北九州市戸畑区西大谷

福岡県北九州市戸畑区に、めずらしいアヤメの「トバタアヤメ」が栽培されている公園があります。

 

戸畑あやめ公園

場所:福岡県北九州市戸畑区西大谷

座標値:33.880043,130.823090

Google map

トバタアヤメが開花する時期が、5月上・中旬にかけてですので、見に行くことにしました。写真は2023年5月12日に撮ったものです。公園の花壇にたくさんの株がありますが、花が満開というわけではなく、ぽつりぽつりと、いくつかが開花していました。

 

実際にトバタアヤメを見てみると、イメージしていたよりも背丈が低いことに驚きました。

アヤメは通常、20㎝~60㎝ほどの高さですが参照、「トバタアヤメ」は10㎝~15㎝ほどの高さしかありません参照。どうしてこんなに背丈が低いのでしょう?数多くあるアヤメの種(しゅ)のなかでも、背丈が大きくならない特別な種だからのようです。背丈が大きくならない特徴を矮性(わいせい)と呼ぶそうです。

 

生物の分類でアヤメの分類をみてみます。

 

植物界ー被子植物ー単子葉類ーキジカクシ目ーアヤメ科ーアヤメ属ー…

 

…と分類が続いていき、さらに下の分類として「種(しゅ)」があります。こちらのサイトでは、アヤメ属の主な種(しゅ)として40数種が挙げられています。

 

この40数種のうちのひとつの種に「トバタアヤメ(Iris sanguinea Hornem. var. tobataensis S.Akiyama et Iwashina)」があります。

 

2009年に発表された論文では、トバタアヤメはその特徴から北九州産のアヤメの一変種として認められています。

 

参照(PDF):https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000077302.pdf

 

トバタアヤメは、明治末期まで戸畑の原野にだけ自生していた植物でした。戸畑区の土取という地区から金毘羅という地区にかけて谷となっています。

この谷はかつて父ヶ谷という名がつけられていたようです。谷部は平原となっており、特に「小澤見野(こぞみの)」と呼ばれていました参照

現在の地図で、むかしの「小澤見野(こぞみの)」と呼ばれる地区をみてみると、たしかに谷となっていることがわかります。現在は、一枝(いちえだ)という名前がつけられています。

 

 

最後に、戸畑アヤメ公園に立てられていた案内板の抜粋を以下に記します。

 

伝説の花 『戸畑あやめ」
学名: Iris sanguinea var. tobataensis

(イリス・サングィネア・バラエティー・トパタエンシス)


「戸畑あやめ」 は草丈が低く、 葉陰に可憐な花をつけるのが特徴です。 かつて 戸畑に自生していた地域(現在の土取から金比羅まで)の名前をとって 「小澤見野の小杜若(コゾミノノコカキツバタ)」 と呼ばれていました。


発見の手がかりとなった地誌 (福岡県地理全誌) には <異草>とあり、 「人愛して他に移し植えれば其の性変じて茎伸び花もまた少なし。 野 (小澤見野) の内側二、三町に限りて生ず。 隣境には無し。」 と記載されていました。


明治末期まで戸畑区の原野にのみ自生し、 その後絶滅したと考えられてきまし たが、 昭和33年に、区内の農園で大切に栽培されていたことがわかり、 以来、地域 の方々によって保存・普及活動が進められてきた 「伝説の花」 です。


平成2年に開催された大阪花の万博 「郷土の花部門」で銅賞をとりました。 また、 平成21年に国立科学博物館から発表された論文により、 日本の固有の あやめの新変種として、 「戸畑」にちなんだ学名 (「トバタエンシス」) がつき、 和名も「トバタアヤメ」として命名されました。


種: 紫
変異種: 白
変異種: 白絞り