以前、九州国立博物館で開催された展示会で購入した『大分県国東宇佐 六郷満山展~神と仏と鬼の郷~』を読み返していると、とても魅力的な石造仏をみつけることができました。
P94に紹介されている仁王立像(におうりゅうぞう)。この写真に紹介されている像は大分県宇佐市の県立歴史博物館で展示されています。仁王像の阿形(あぎょう)のほうです。
P94の紹介文を読むと吽形(うんぎょう)のほうは、いまでも豊後高田市の夷(えびす)という地区に、当時のまま存在しているとのことです。その昔、この仁王像がある場所には「渓口庵(けいこうあん)」というお寺があったそうです。
なぜ吽形のほうは博物館に移動されていないのか?文章を読む限り、その理由は明記されていませんが、どうも吽形の破損がひどい状態だからと考えられます。
本像と対をなしていた吽形像が残っているが、翻る天衣の大半や左手首先などを欠く。
九州国立博物館での展示会では、阿形のほうは拝観しましたが、吽形のほうはまだです。ぜひひと目みてみたいと思い立ち、会いにいってみることにしました。
手掛かりは
・豊後高田市 夷 前田という地区にある
・渓口庵というお寺があった場所
…という2点です。
ネットで調べてみると、こちらのサイトで詳細な場所まで紹介してくれていました。
渓口庵 仁王像(吽形)の場所
場所:大分県豊後高田市夷
座標値:33.6232019,131.5426861
県道708号線から林道に入り込みます。県道708号線からは約50m、林道をのぼっていくかたちとなります。↓下の写真は県道708号線上で、林道入口を撮ったものです。進むべき道は左側です。林道入口のみ、コンクリートで舗装され白くなっています。
ちょっと引いて写真を撮ったものです↓ 看板があります。吉田光由の墓、渡辺藤兵衛の墓についての案内看板です。
ここから約50m林道をあがると右側に三体の石仏が祀られる石祠と、めざしていた仁王像らしき石仏が祀られています。
↓想像していた以上に仁王像の状態は悪いものでした。参考にさせていただいたサイトの写真では仁王像の首はあったのですが、2019年3月16日時点では、首はなくなっていました。
『大分県国東宇佐 六郷満山展~神と仏と鬼の郷~』の情報どおり左手首は欠損しているのがわかります。からだじゅうに苔がつき像の細かい彫刻は判別しにくくなっています。
像の高さはおよそ80㎝と思われ、2歳の子どもくらいの大きさです。江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した板井という石工の関係者が造ったものと推定されています。
仁王像周囲には他にもたくさんの石仏が祀られ、たくさんの石垣がつらなっていました。これらの史跡はもしかしたら渓口庵(けいこうあん)の跡の一部なのかもしれません。