『はじめての地質学』P.49‐56,地質からわかることは?
1. 地面はどうやって曲がったり割れたりするの?
地層は、もともとはバームクーヘンやミルクレープのように水平に重なってできています。そのままそっと持ち上がっただけなら、きれいな横縞模様のままです。しかし、地球の奥深くからものすごい力が加わると、地層は形を変え、過去にどんな力がかかったのかという「歴史」を記録していくことになります。
力が加わったときの岩石の変化は、次の3つのステップで進みます。
弾性変形(だんせいへんけい)
例: プラスチックの定規を軽く曲げているような状態。
力を抜けば、元のまっすぐな状態に戻ります。
塑性変形(そせいへんけい)
例: 粘土や、少し温まった板チョコをグニャッと曲げる状態。
さらに力が加わり続けると、曲がったまま元に戻らなくなります。
断層(だんそう)
例: 板チョコを限界まで曲げて「パキッ!」と割れ、ズレてしまった状態。
岩石が耐えきれなくなって割れ、その割れ目に沿ってズレが生じます。
断層の種類と「褶曲(しゅうきょく)」
割れた時の力の加わり方によって、断層はいくつかの種類に分けられます。
正断層(せいだんそう)
左右から引っ張られて、片方がズルッと滑り落ちたもの。
逆断層(ぎゃくだんそう)
左右から押し合って、片方が上に乗り上げたもの。
※乗り上げる角度がゆるいものを衝上断層(しょうじょうだんそう)と呼びます。
横ずれ断層
上下ではなく、水平方向(横)にズレたもの。
また、地層が割れずに、左右からギュッと押されて波打つようにグニャグニャに曲がった状態を褶曲(しゅうきょく)と呼びます。
2. 地球の歴史を読み解く「地質図」
野外で実際の地層を観察したり、石を持ち帰って調べたりした結果をもとに、「どこに・どんな時代の・どんな岩石があるか」を地図上に色分けしてまとめたものが「地質図」です。
地質図を見ると、地層ができた順番や、マグマが冷えて固まった岩石(火成岩)がどう広がっているかがひと目でわかります。これは、「地球の4次元パズル」を解くようなものです。
2次元(平面)から3次元(立体)へ
地表面の平面的な色分けデータを見るだけで、「地下の地層はどう傾いているか」「どこが出っ張っているか」といった地下の立体構造を推理できます。
そして4次元(時間)へ
そこに「いつの時代か」という時間の情報を加えることで、「この地域はどうやって今の地形になったのか」という歴史(4次元の情報)を読み取ることができるのです。
科学の進歩でさらに昔のことがわかるように
最近では、岩石の年代を測る「放射年代測定」という技術がとても進歩しました。これにより、化石がほとんど見つからないような、はるか昔(先カンブリア時代など)の岩石でも「これは何億年前の石だ!」と特定できるようになったのです。この技術のおかげで、遠い過去の地球で、巨大なマグマの活動や大きな山脈ができるような激しい動き(造山運動)が、何度も繰り返されていたことがわかっています。
3. 身近な「地球の記録」~関東ローム層の秘密~
地域の歴史(地史)を読み解く、身近でわかりやすい例があります。それは、関東平野に広く分布している「関東ローム層」という赤い土の層です。園芸などでもおなじみのきれいな「赤土」ですが、実はこれ、ただの泥や土ではありません。富士山や箱根、浅間山といった火山が噴火したときの「火山灰」が、風に乗って飛んできて長年降り積もったものなのです。つまり、過去の火山活動を記録したタイムカプセルのような存在です。
4つの「火山灰の層」と「階段状の地形」
関東近郊のローム層は、古い時代に積もった順に「多摩(たま)」「下末吉(しもすえよし)」「武蔵野(むさしの)」「立川(たちかわ)」という4つのグループに分けられています。これが面白いのは、川沿いや海沿いによく見られる「段丘(だんきゅう)」と呼ばれる階段状の地形と、ピタリとリンクしている点です。
例: 地面を「階段」に見立て、火山灰を上から降ってくる「雪」だと想像してみてください。
一番高い段(一番古い時代にできた地面)には、昔から最近までの4回分の雪がすべて積もっています。
しかし、あとから地面が削られて一段低くなった場所(新しい時代にできた地面)には、大昔の雪は積もっておらず、新しく降った雪しかありません。
このように、「どの高さの段丘に、どの時代のローム層(火山灰)が乗っているか・乗っていないか」をパズルのように調べることで、次のような壮大なストーリーがわかります。
「いつ、どの火山が噴火したか」(火山活動の歴史)
「いつ、地面がググッと持ち上がった(隆起した)のか」(台地ができた歴史)
「昔の海面はどこまで来ていて、どう変化したのか」(海面変動の歴史)
ただの赤い土に見える関東ローム層も、人が生活しているこの大地が「どうやって今の形になったのか」を語ってくれる、記録帳です。
まとめ
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岩石に大きな力が加わると、弾性変形から塑性変形を経て、限界に達すると割れて断層が生じます。
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力の加わり方によって正・逆・横ずれなどの断層や、地層が波打つ褶曲が形成され、過去の動態が記録されます。
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地質図は地表面の岩石分布を示し、平面データから地下の立体構造や時間軸を含む地形形成史を推測できます。
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放射年代測定技術の進歩により、化石のない古い岩石の年代特定が可能となり、過去の造山運動が解明されました。
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関東ローム層と段丘地形の重なりを解析することで、過去の火山活動や地面の隆起、海面変動の履歴を特定できます。