「不動産の事故物件ってありますよね。その部屋や建物について、再運用時には家賃が目減りしてしまうことで資産価値が減少します。その資産価値を相場に戻すための調査会社をやりたいと思っています」(『事業内容:オバケ調査 - 事故物件を科学的に調査する会社で起きたこと』,児玉 和俊,位置: 991)
不動産の価値を「収益還元法」に基づき、月数万円の賃料下落が数百万円の資産価値損失に直結するという事実。この経済合理性が、オバケ調査という一見非科学的に見える手法に、強固な論理的基盤を与えています。
「心理的瑕疵」という実体のない不安を、科学的な調査と不動産ビジネスの論理で解体していく。著者の児玉和俊氏が立ち上げた「株式会社カチモード*1」の歩みは、単なるオカルト探究ではなく、「価値の再定義」。日常のトラブルを「感情」で捉えるのではなく、一つの「システム」として構造的に把握しようとしています。
「まずは全ての事実を受け入れ、それを使って問題を解いているうちにわからない内容も理解できるはず」(位置: 502)
児玉氏が資格試験の勉強中にたどり着いた「わかるわからないではなく、まずは全てを受け入れよう」という心境。科学的な機材(映像、音声、電磁波、サーモグラフィー)を駆使してデータを収集する一方で、その場に流れる「重苦しさ」をも一つの事実として受容する。この「フラットな対峙」は、恐怖や不安に呑まれず、かといって対象を軽んじてエンタメ化もしない。
事故物件で亡くなった方を「気持ちの悪い存在」として切り捨てるのではなく、「誰かの大切な人である」と捉え直す倫理観。
「そこで亡くなった方は気持ちの悪い存在ではなく、誰かの大切な人である」(位置: 1,921)
報告書という形で事実を整理することで、入居者の不安は和らぎ、オーナーの資産価値は守られる。科学的な調査という「無機質なプロセス」の先に、人間としての尊厳を回復させる「温かな着地点」が用意されている。得体の知れない不安を構造化し、価値を再定義する。
*1:「価値をもどす」が社名の由来