東京都心ではありますが、筑土(つくど)八幡神社の境内では、静謐な空気が漂います。筑土八幡神社の一角に、ひっそりと庚申塔がまつられています。新宿区指定有形民俗文化財ともなっています。寛文四年(1664年)に建立された庚申塔です。
場所:東京都新宿区筑土八幡町
座標値:35.704021,139.740700
下は、庚申塔のそばに建てられている案内板の内容です。
新宿区指定有形民俗文化財
庚申塔
所在地:新宿区筑土八幡町二番一号
指定年月日:平成九年三月七日
寛文四年(1664)に奉納された舟型(光背型)の庚申塔である。高さ186センチ。塔身最上部に日月を、中央部には一対の猿と桃の木を配する。右側の牡猿は立ち上がり、実の付いた桃の枝を手折っているのに対し、左側の牝猿はうずくまり、実のついた桃の一枝を手にしている。塔身の正面下部には奉納者と思われる男女十名の戒名または俗名が刻まれている。また塔身の両側面下部には奉納年と月日が左右にわけて刻まれているほか、女性二名の俗名も刻まれている。一般に庚申塔では、三猿を表現したものが多いが、この塔は区内では唯一の二猿の構図であるばかりでなく、桃を配している点が全国的にも極めて珍しく貴重なため、古くから知られていた。桃は古くから邪気を払うとされ、また桃の葉をしぼった汁を服用すると庚申信仰の目的である三尸虫を除くとの俗説があったという。
令和五年十一月三十日
新宿区教育委員会
高さ186センチメートルの庚申塔は、舟形(光背型)と呼ばれる形状で、中央に一対の猿と桃の木が彫られています。一般的に庚申塔には三猿が表現されることが多いのですが、この塔では二猿の構図が採用されている点が特筆されます。さらに、邪気を払うとされる桃が配されている点も、全国的に見ても珍しいです。
健康や長寿を願い、仲間との絆を深めるために建立したものと考えられ、庚申塔の足元には、建立に関わった人々の名前が刻まれています。
三百数年の時間が経過しても、保存状態は極めて良好です。美術的価値も高いのではないかと考えられます。特に目を引くのは猿の姿で、写実的でありながらも洗練された意匠は、スマートで美しく感じます。
国東半島の庚申塔に見られるような素朴な力強さもまた魅力的ではありますが、筑土八幡神社の庚申塔は、その対極にあるような美的洗練さが感じられます。