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福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

読書メモ『本の読み方 スロー・リーディングの実践』

本の読み方 スロー・リーディングの実践』(平野啓一郎)

 

一冊の本とじっくり向き合い、その内容を深く理解しようと努める。読書の質を高めるためには、速読ではなく、スロー・リーディングの実践が重要となる。具体的には、線を引いたりメモを取ったりしながら読む。重要な箇所や興味深い文章に印をつけることで、記憶への定着を促し、後から見返す際にも役立つ。

 

また、接続詞などに注目し、文章全体の論理構造を意識することで、筆者の主張をより明確に把握することができる。接続詞は、文と文、段落と段落の関係性を示し、筆者の思考の流れを理解する手がかりとなるためである。例えば、「しかし」「だが」「けれども」といった逆接の接続詞は、前後の文が対比関係にあることを示している。これらの接続詞が現れたら、「筆者はここで、それまでの内容と異なる視点や主張を導入しようとしている」と意識することで、文章の展開を予測しやすくなる。「そして」「さらに」「また」などの順接の接続詞は、前の内容に新たな情報を付け加えたり、強調したりする役割を担う。これらの接続詞に着目することで、筆者がどのような論理展開で主張を組み立てているのかを把握することができる。「なぜなら」「だから」「したがって」といった接続詞は、理由や根拠、結論を示す際に用いられる。これらの接続詞の前後には、筆者の主張を支える重要な情報が含まれている可能性が高いため、注意深く読む必要がある。接続詞を意識しながら読むことで、文章の論理構造が明らかになり、筆者の意図や主張をより深く理解することができると考えられる。

 

接続詞だけでなく、指示語*1や繰り返されるキーワードにも注目することで、文章全体のつながりが見えてくる。指示語は、前に出てきた単語や文脈を指し示す言葉であり、文章の流れを把握する上で重要な役割を果たす。また、キーワードが繰り返し登場する場合、それは筆者が特に強調したいポイントである可能性が高いため、注意深く読み込む必要がある。

 

スロー・リーディングでは、これらの点を意識することで、単に文章を表面的に読むのではなく、筆者の思考を辿り、その主張を深く理解することが可能になる。一冊の本をじっくりと時間をかけて読めば、本、10冊分、20冊分の本を読んだのと同じ手応えが得られると述べられている*2

 

さらに、読書中は常に「なぜ」という疑問を持ち続けることが大切である*3。登場人物の行動や感情、作者の意図など、あらゆることに疑問を抱き、考え続けることで、より深い読解へとつながる。また、自分自身の経験や価値観と照らし合わせながら読むことも重要である。登場人物に共感したり、反発したりすることで、自分自身の考えを深め、新たな視点を得ることができると考えられる。

 

著者の主張や登場人物の行動に対して、「なぜそう思ったのか?」「なぜそのような行動をとったのか?」と疑問を投げかけ、その理由や背景を深く探っていく。登場人物の感情や状況に共感することで、自分自身の経験や価値観と重ね合わせ、新たな気づきを得たり、深い感動を味わったりすることができる。著者の意見に同意できない場合は、なぜそう思うのかを自分なりに考え、反論することで、批判的な思考力を養うことができる。本の内容をきっかけに、自分自身の考えや価値観を見つめ直し、新たな視点を得たり、人生観を深めたりすることができる。

 

スロー・リーディングは、単に情報を得るだけでなく、主体的に考え、自分自身と向き合うための読書法である。時間をかけて丁寧に読むことで、一冊の本から得られる知識や感動は、速読で何冊も読むよりもはるかに大きいと考えられる。ただ文字を追いかけるのではなく、自分自身の考えや感情と照らし合わせていく。まるで著者が目の前にいて、語りかけてくれているかのように、問いかけ、共感し、反論することで、深いレベルでの理解と共鳴が生まれる*4

*1:いわゆる「こ・そ・あ・ど言葉」のことで、「これ」「それ」「あれ」「どれ」や、「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」や、「こちら」「そちら」「あちら」「どちら」など。

*2:Kindle位置: 777

*3:Kindle位置:1078

*4:Kindle位置:2194