日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

ウィルスの感染対策におけるAIの活用

参考書籍

アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』(ハンナ・フライ、森嶋 マリ)

新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ』(黒木登志夫)

mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』(ジョー ミラー )

 

2020年、世界中で新型コロナウイルス感染症が流行し、多くの人達の生活様式が大きく変わりました。感染拡大防止のために、多くの国で移動や集会の制限など、様々な対策が取られてきました。また、この危機は社会に大きな変化をもたらすと同時に、AI技術の進歩を加速させたと考えられます。医療現場*1ではAIによる画像診断や創薬が、そして教育やビジネスの分野ではオンライン化が急速に進展しました。また、世界的な感染拡大は人々に、お互いに協力し合うことの大切さを改めて認識させたと考えられます。AI技術は、人と人との繋がりを支援するツール*2としても活用され、オンラインコミュニティや情報共有プラットフォームなどを通じて、人々は物理的な距離を超えて支え合うようになりました。

 

感染拡大の予測

感染拡大の予測は、世界的な感染拡大の抑制に不可欠な要素です。そのために、EpiCast*3のようなアルゴリズムを用いた予測モデル、感染状況のシミュレーション*4、医療資源配分の最適化といった手法が活用されています。EpiCastは、論文で紹介されたように、疫病の複雑な拡散過程を非線形モデル*5で表現し、地域間でその特徴を共有することで、高精度な感染拡大予測を可能にします。過去の感染データや人口統計などを分析することで、将来の感染者数や感染地域を予測し、医療現場への負担を軽減することに役立ちます。感染状況のシミュレーションは、様々な条件下での感染拡大を予測する手法です。例えば、人々の行動制限の強化や緩和、ワクチンの接種率の変化などが感染状況にどう影響するかをシミュレーションすることで、最適な対策を検討することができると考えられます。医療資源配分の最適化は、限られた医療資源を効率的に活用するための手法です。感染状況の予測に基づいて、どの地域にどれだけの医療従事者や病床を配置すればよいかを判断することで、医療現場の逼迫(ひっぱく)を防ぐことができます。これらの手法を組み合わせることで、感染の拡大による被害を最小限に抑えるための効果的な対策を立てることができます。しかし、予測モデルやシミュレーションはあくまでも予測であり、実際の状況は時間とともに変化する可能性があります。常に最新の情報に基づいて予測を更新し、柔軟に対応していくことが必要であると考えられます。

 

医療現場におけるAI支援

AIは医療現場において、人間の医師を支援する強力なツールとして、様々な形で貢献しています。ハンナ・フライ氏の著書「アルゴリズムの時代」でも述べられているように、AIは特に、大量のデータからパターンを認識する必要がある分野でその真価を発揮します。画像診断では、CT画像やレントゲン画像をAIが解析することで、腫瘍や骨折など、異常な部分を医師よりも迅速かつ正確に発見することができます。例えば、乳がんの検診では、AIはマンモグラフィ画像を分析し、微細な石灰化や腫瘤を発見することで、早期診断に貢献しています。病理診断では、顕微鏡画像をAIが解析することで、がん細胞の有無や種類を判別することができます。これにより、病理医の負担を軽減し、診断の精度向上に役立ちます。重症化リスク予測では、患者の病歴、バイタルサイン、血液検査データなどをAIが総合的に分析することで、将来的な重症化リスクを予測することができます。これは、医療資源の効率的な配分や、患者一人ひとりに最適な治療方針を決定する上で役立ちます。創薬では、AIは膨大な量の化合物データや臨床試験データを解析することで、新薬候補の探索や副作用の予測を効率化することができます。AIを活用することで、創薬にかかる時間とコストを削減し、より効果的で安全な薬を開発することが期待されます。AIは、医療従事者にとって、診断、治療、そして予防を支援する頼もしいパートナーと言えますが、「アルゴリズムの時代」でも指摘されているように、AIはあくまでもツールであり、最終的な判断は人間の医師が行う必要があります。AIと人間の協調によって、より質の高い医療を提供できるようになることが期待されます。


ワクチン開発

ワクチン開発は、パンデミックを克服するための重要な鍵です。従来、ワクチン開発には長い年月と多大な費用がかけられていましたが、AI技術の導入により、そのプロセスが劇的に効率化されつつあります。AIは膨大なデータからパターンを認識し、未来を予測することに長けています*6。この能力は、ワクチン開発においても大いに役立ちます。AIは、膨大な量のウイルス遺伝子情報やタンパク質構造データを解析することで、効果的なワクチン候補物質を効率的に探索することができます。従来の方法では、膨大な数の候補物質を一つずつ実験で検証していく必要がありました。しかし、AIを活用することで、有望な候補物質を絞り込み、開発期間を大幅に短縮することができます。さらに、AIは臨床試験の効率化にも貢献しています。臨床試験の参加者の選定や、試験結果の解析をAIが行うことで、より迅速かつ正確にワクチンの効果と安全性を評価することができます。AI技術の導入により、ワクチン開発はかつてないスピードで進められています。これは、パンデミックの早期収束に向けて大きな貢献を果たしました。

 

mRNAワクチン開発に貢献したAI

mRNAワクチンは、従来のワクチンとは全く異なるメカニズムで、ウイルスの感染を防ぐことができます。mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報の一部を人工的に合成したmRNAを体内に導入することで、体内でウイルスのタンパク質を生成させ、免疫を獲得するという仕組みです。このmRNAワクチン開発において、AIは重要な役割を果たしました*7。AIは、膨大な量のウイルス遺伝子情報やタンパク質構造データを解析することで、効果的なワクチン候補物質を効率的に探索することに貢献しました。また、AIは臨床試験の効率化にも貢献しています。臨床試験の参加者の選定や、試験結果の解析をAIが行うことで、より迅速かつ正確にワクチンの効果と安全性を評価することができます。AI技術の導入により、mRNAワクチンは、パンデミックの最中に、記録的な速さで開発されました。これは、AI技術がワクチン開発に革命をもたらしたことを示す象徴的な出来事と考えられます。


アルゴリズムの有用性と危険性– AI技術の倫理的な課題

AI技術は、生活を豊かにする可能性を秘めた強力なツールですが、その利用には倫理的な課題がつきまといます*8。AIは、膨大なデータからパターンを認識し、未来を予測することで、医療、交通、金融など、様々な分野で革新をもたらしています。しかし、AIはあくまでも人間が作り出したものであり、その判断は常に正しいとは限りません。AIの偏見とエラーは、大きな問題となり得ます。AIは過去のデータに基づいて学習するため、学習データに偏りがあれば、AIの判断にも偏りが生じます。これは、差別や不平等を助長する可能性があります*9。また、AIは予期せぬエラーを起こす可能性もあります。例えば、自動運転車が誤った認識をして事故を起こす危険性も懸念されます。プライバシーの侵害も深刻な問題です*10。AIの開発や利用には、大量の個人情報が必要となります。個人情報が適切に管理されなければ、プライバシー侵害に繋がりかねません。行動は、様々な形でAIによって監視され、記録されている可能性も考慮する必要があります*11。さらに、AIは情報操作にも悪用される可能性があります。精巧なフェイクニュースやプロパガンダは、人々の意見を操作し、社会不安を引き起こす可能性があります。AIによって作られた偽の情報に、気づかないまま影響を受けている可能性もある*12と考えられます。AIを利用する者に必要なことは、その限界を理解し、危険性を認識することが重要と考えます。盲目的にAIに従うのではなく、AIの判断を批判的に吟味しする必要があります。AIはあくまでも道具であるため、これを倫理的に活用することが必要と考えます。

 

正しい情報収集と冷静な判断を行なう

世界的な感染拡大は、医療現場を逼迫(ひっぱく)させ、経済活動を停滞させ、生活を一変させました。こうした困難な状況下でも、冷静さを失わず、前向きに生活してゆく必要があります。そのためには、まずリスクと向き合い、「自分は大丈夫」という思い込みを避ける必要があります。周囲に流されず、信頼できる情報源から正確な情報を得るように努める必要があります。そして、先行きが見えない状況でも、感情的にならず冷静に判断することが必要です。リスクと向き合うためには、具体的には以下の2点が必要と考えます。

 

1. 正常性バイアス*13に陥らない

「自分は大丈夫」という油断から、マスク着用や手洗いを疎かにしてしまうことがあります。最新の感染状況や変異株の情報に注意を払い、自分自身も感染する可能性があることを常に意識する必要があります。感染対策のガイドライン*14を遵守し、基本的な予防策を徹底し、感染から自分と周囲を守るために、できる限りの努力を継続する必要があります。

 

2. 集団心理に流されない

「この治療法は効果がない」というような情報を目にすることがあるかもしれませんが、そのような情報を鵜呑みにして、根拠を確認せずに治療法を避けてしまうのは危険だと考えます。情報源の信頼性を確認し、論文や学会発表など、科学的根拠に基づいた情報を得ることが大切と考えます。自身が納得いくまで情報を確認する必要があります。

*1:AIの医療分野への応用による効率化に関する文献調査』.福田敬

*2:例えば、MicrosoftのSeeing AIやGoogleのLive Captionなど

*3:EpiCast は、様々な地域を含む大規模疫病データストリームが与えられたときに、その中から疫病の特徴を表現、要約、共有し、長期的かつ継続的に将来の感染者数予測を行う「高速予測手法」のこと。『大規模疫病データストリームのための将来予測アルゴリズム』木村輔etc

*4:感染シミュレーションと逆解析手法を用いた感染症対策の計画方法の提案』相澤景etc

*5:複雑な曲線で感染拡大を表現する方法で、昔ながらの感染者数の変化を単純な線で表わす方法ではなく、複雑な曲線で感染拡大を表現する方法

*6:アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』(ハンナ・フライ、森嶋 マリ)

*7:三井住友DSアセットマネジメント.『コロナ』と、『AI』によるワクチン・治療薬の進展

*8:アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか』(ハンナ・フライ、森嶋 マリ)

*9:AI公平性・説明可能AI(XAI)の概説と動向.株式会社日本総合研究所先端技術ラボ

*10:生成AIのプライバシー侵害リスクと規制.柏木亮二.野村総合研究所(NRI)

*11:IoT·AI における監視の拡散とその制御についての一考察.松尾陽

*12:偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究.国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

*13:予期せぬ事態に直面したときに「正常の範囲内である」と判断し、平静を維持しようとする心理状態。

*14:厚生労働省.感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等