場所:沖縄県那覇市首里金城町
座標値:26.214615,127.715880
首里城の南西約440m地点に、上ヌ東門ガー(ウィヌアガリジョウガー)という井戸が残っています。井戸があるのが金城町(きんじょうちょう)という地区で、このあたりの町の石垣は琉球石灰岩でつくられているものが多いようです。琉球石灰岩は更新世(約258万年前から約1万1700年前まで)の時期にサンゴ礁のはたらきで形成された岩石です。琉球石灰岩のみためは「なめらかな岩」というよりも、表面がざらざらゴツゴツした厳つい感じの岩です。
地質図naviで、上ヌ東門ガー(ウィヌアガリジョウガー)のある場所を確認すると、中新世(2400万年前から510万年前まで)の堆積岩である泥岩で構成されています▼
▲上図の、やや濃い水色で表示されている場所は石灰岩…琉球石灰岩…で構成されている地質の場所です。上ヌ東門ガーは石灰岩の台地状になっている場所のふもとに位置していることがわかります。
国土地理院地図の色別標高図でも上ヌ東門ガーのある場所を確認すると、「台地のふもと」であることがよくわかります▼
沖縄本島南部に厚く堆積している琉球石灰岩は、サンゴ礁が隆起して形成されたもので、多孔質で透水性が高いという特徴があります。このため、雨水が地中に浸透しやすく、地下水脈が発達していることが特徴です。さらに岩石の間には、地殻変動などによってできた割れ目があり、これらの割れ目に水が浸透していることも考えられます。上ヌ東門ガーの湧水は、この割れ目から湧出していると考えられます。
「台地」に染み込んだ雨水が石灰岩の地質のなかに染み込み、時間をかけて流れてゆき、「台地のふもと」にある場所から染み出していると考えます。
以下は上ヌ東門ガー(ウィヌアガリジョウガー)の案内板の内容です▼
那覇市指定史跡
1988年8月25日指定
18世紀頃つくられた首里古地図に記されている共同井戸で古くから地域住民の暮らしと深く結びついている。毎年旧暦9月に行われる「ウマーチムウグヮン」(防火災祈願)の拝所の一つになっている。構造は斜面をL字型に削り半円型に掘り下げてあり、前面には水汲み場の石敷広場を設け、その東南隅には排水溝が延びている。
那覇市教育委員会
上ヌ東門ガーの北北東125m地点には、内金城の御嶽(うちかなぐすくのうたき)があります。そのため、この井戸の水には特別な力があると信じられ、神聖視されていたことが考えられます。御嶽(うたき)は、琉球神道において祭祀を行う聖地で、祖先神を祀り、地域を守護する場所です。そのために、井戸の水は儀礼や祈りに用いられたと考えられます。
上ヌ東門ガーは、”水を提供する”という人の生活を支える機能だけでなく、祖先や自然への信仰と深く結びついた場所であったとともに、水を汲む井戸のある場所は、人々が集い、交流を深める大切な場所でもあったと考えられます。