雑草に着目して、植物についての情報をあつめていくと、植物がどのように競争しながら生きていっているのか、一端を知ることができます。
題名に「雑草は【強く】て【弱い】」と矛盾する言葉をならべましたが、『雑草はなぜそこに生えているのか』Kindle位置番号188-324をよむと、どちらも正しいことがわかってきます。
雑草が【強い】というのはどういうこと?
コンクリートのすきまや、石垣のあいだ、砂利のすきまなど、水と養分があればどんな場所からも芽をだそうとします。また道ばたに芽をだすロゼット型の葉をもつ雑草はなんどもふまれても、生き延びています。そしてやっかいなことに、草取りをしても根っこが残っていると数日後には再び芽をだし葉を広げます。このような雑草のたくましさを目にすることで、「雑草は強い」という印象を持ちます。
雑草は【弱い】というのはどういうこと?
いっぽうで『雑草はなぜそこに生えているのか』を読むと、雑草は弱い植物であるということがわかります。もうすこし言葉を補足すると【競争に対して弱い】ということがわかります。
2020年4月7日の記事「雑草」と「野草」はどうちがう?で…
・人の手が一定期間ごとに入る土地で生えるのが雑草
・人の手がくわわっていない自然のなかに生えるのが野草
とご紹介しました。雑草は人の手がくわわって”さら地”となった土地に、早い段階から芽をだす植物です。どうしてこんなに早く雑草は芽をださないといけないのかというと日光が必要だからです。雑草も含め植物は、ぐんぐん葉をひろげ日光をあび光合成をして栄養をつくる必要があります。
光だけでなく、地面の下では水と養分をとるために根をひろげる必要があります。野草と比較し、雑草はこの「光・水・養分」をとる能力が低いようです。そのために競争の熾烈(しれつ)な森林のなかでは、雑草は生き延びられません。
そこで雑草が選んだ戦略は【ヒトがいる環境に生きる】というものです。【ヒトがいる環境】はしょっちゅう「環境のかく乱」がおきています。具体的には土が耕起(こうき)されたり、草が刈られたり抜かれたり、もともとあった建物が壊され更地にされたり…などなど。
こうやって裸地となった場所には、雑草と競合する植物がいないために、いちはやく雑草がはいりこんできます。
小さな植物である雑草は、遷移(せんい)の初期段階に生える植物なのだ。まだ遷移の初期段階の植物がない状態の場所に、他の植物に先駆けて生える植物は「パイオニア植物」と呼ばれている。つまりは開拓者である。雑草はなぜそこに生えているのかKindle位置番号273
はじめに裸地にはいりこんでくるのは1年以内に枯れてしまう一年生植物です。
一年生植物は、すばやく土地にはいりこんではくるけれども、根っこをじっくりと伸ばし養分を吸収していく能力は、比較的、多年生植物のほうが高いと考えられます。
そのため一年生植物がはびこっていた土地は、じょじょに多年生植物へと遷移(せんい)してゆきます。
多年生植物のなかでも、またじょじょに遷移がおきてゆきます。はじめは背の低い多年生植物でも日光をあびることができていたのが、だんだん背の高い多年生植物がおおくなってきて、背の低い多年生植物は淘汰されてゆきます。
草だけでなく低木も生えてきだし、やがて藪(やぶ)となります。藪のなかで、栄養を日光や土からとる能力に長けた木々が繁茂してゆき、ついには雑草はいなくなってしまいます。
まとめ
このように、”さら地”に入りこんでいく初動力は強いけれど、じっくりと根をおろしてからはじまる競争内では、とても弱い存在なのが雑草です。競争というのは「光・水・養分」をうばいあう競争です。
雑草は、ヒトの手がくわわった土地で一時的にいきていける存在です。自然にまかせてほうっておけば、雑草は、いずれは野草や樹木に生存場所をうばわれてなくなってゆきます。ヒトの生活と伴走しているのが、雑草の生活といえるのかもしれません。