日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

天念寺 修正鬼会 2020年 ②/④ ~大松明を直立させるタイアゲ~ 大分県豊後高田市長岩屋

国東半島に1000年前から伝わる儀式である修正鬼会(しゅじょうおにえ)が、2020年1月31日(金)に開催されました。場所は大分県豊後高田市長岩屋にある天念寺(てんねんじ)講堂です。

天念寺の修正鬼会 3本の大松明を直立させるタイアゲ

3本の大松明を直立させるタイアゲ

場所:大分県豊後高田市長岩屋

座標値:33.578583,131.540714

 

前回の「身を清める垢離(こうり)取り」に引き続き、今回の記事では約5mの大松明に点火し、直立させる儀式である「タイアゲ」についてご紹介してゆきます。

天念寺の修正鬼会 スケジュール タイアゲ

垢離取りを終え衣裳に着替えたテイレシは、天念寺の本堂にて、20時ごろに不浄祓いを行なってもらいます(参照:天念寺修正鬼会調査報告 『行事の次第』 付録 資料 鬼会式〔豊後高田市教育委員会〕P.2)

 

不浄祓いを終えたテイレシは、天念寺の本堂から取られたロウソクの火を僧侶から受取ります。テイレシはロウソクの火を松明に移し、長岩屋川をはさんで天念寺本堂とは対岸にある長岩屋の集会所前の広場までもってゆきます。そして広場に用意されている薪(たきぎ)に点火します。

20時ごろ薪にテイレシが点火 天念寺の修正鬼会

20時ごろ薪にテイレシが点火

燃え上がる炎で冬の冷たい空気がいっきに温まり周囲から歓声があがります。薪の傍にはあらかじめ3本の大松明(オオダイ)が寝かせられています。火に勢いがついてきたら、オオダイの頭が薪につっこまれます。

オオダイの頭に火が移ったら、いよいよ3本のオオダイが移動されます。どこに移動されるかというと…

 

①天念寺講堂

②天念寺本堂近く

③権現社鳥居前

 

…です。①→②→③の順にオオダイが運ばれ、そこで直立されるのです。

運ぶ前 火先を整えるために山の斜面へオオダイの頭を数回打ちつける 天念寺の修正鬼会

運ぶ前 火先を整えるために山の斜面へオオダイの頭を数回打ちつける

長さが5m、重量が400㎏もあるオオダイをこのわずかな人数だけで運びます。テイレシたちの熱気とオオダイの熱気が周囲にも伝わっていきます。

担がれてゆくオオダイ 天念寺の修正鬼会

担がれてゆくオオダイ

長岩屋川に架かる石橋を通り、①天念寺講堂、②天念寺本堂近く、③権現社鳥居前…の3か所に配置されたオオダイは、テイレシたちの掛け声とともに、ひとつずつ直立されてゆきます。

松明やテイレシたちの動きの予想ができないために、見とれてぼんやりと立ってなどしていると「そんなとこに立っていると危ないよ!」と注意を受けます。こちらも邪魔にならないよう配慮が必要です。

ひとりのテイレシがオオダイの尻を↑上の写真のように固定し、残りのテイレシたちが素手や竹の棒でオオダイの頭を持ち上げてゆきます。力強いテイレシたちの仕事に会場はさらに盛り上がってゆきます。

3本のオオダイのうち権現社鳥居前で直立されるオオダイ 天念寺の修正鬼会

3本のオオダイのうち権現社鳥居前で直立されるオオダイ

 

オオダイを支えるテイレシ 天念寺の修正鬼会

オオダイを支えるテイレシ

みごとに3本のオオダイが直立しました。”オオダイ(大松明)を立てる”。これがタイアゲという名前の由来です。3本のオオダイが直立すると僧侶が九字を切って祈念します。

そして①③②のオオダイの順で講堂の本尊である薬師如来前と、権現社前へとオオダイが運ばれてゆきます。

 

↓講堂の薬師如来前まで運ばれているオオダイ。オオダイの頭側を講堂の入口に向け置きます。そしてダイは左右3回転ずつ上下3回ずつ振られ献灯がなされます。

タイアゲも終盤へと入ります。献灯が終了するとタイアゲ一番のみどころとなります。オオダイの頭どうしが権現社前で何度もぶつけられます。寒空に大量の火の粉が舞い上がります。もしかしたら、これも献灯の一部なのかもしれません。

オオダイの頭が権現社前でぶつけられ火の粉が舞い上がる 天念寺の修正鬼会

オオダイの頭が権現社前でぶつけられ火の粉が舞い上がる

周囲が真っ暗なだけに、発生する火の粉はとても美しく見えます。

数度のぶつかりあいが終わると、オオダイは講堂前の広場に運ばれ火が消されます。こうしてタイアゲが終了します。まさに圧巻の儀式です。

 

次回の記事では、21時から開始する立役(たちやく)のなかの米華(まいけ)~鈴鬼(すずおに)までをご紹介したいと思います。

立役というのは、僧侶が昼の勤行で主に座って行う座行に対して呼ばれる行のようです。主に立って行なう行のため立役と呼ぶようですね。昼の座行と、夜の立役をあわせて一通りの行事となります。