国東半島に1000年前から伝わる儀式である修正鬼会(しゅじょうおにえ)が、2020年1月31日(金)に開催されました。場所は大分県豊後高田市長岩屋にある天念寺(てんねんじ)講堂です。
場所:大分県豊後高田市長岩屋
座標値:33.578583,131.540714
今年は19時からの夜の勤行から参加することができたので、行事の順を追って修正鬼会をご紹介したいと思います。
”毎年正月初めに国家安穏、万民快楽(げらく)、五穀豊穣を祈念する行事”とのことで、決してお祭りではありません。典儀(てんぎ)ではあるけれど、たくさんの一般のかたも参加することができます。
そして、巨大な松明(たいまつ)をぶつかりあわせたり、鬼の面をつけた僧侶が激しく舞うなど、迫力あるシーンもみることができます。災払い鬼と荒鬼が出てくるあたりから行事は最高潮を迎えます。
参加者はふりかかってくる火の粉を払いながら逃げたり、撒かれる餅(鬼の目と呼ぶ)を拾ったりと、参加者も一緒に楽しむことができる行事です。
修正鬼会は以下のようなスケジュールですすんでゆきました。これらすべてをご紹介すると、とても長くなるので、今回の投稿では19時からはじまる垢離(こうり)取りをご紹介します。
垢離取りは、その名前のとおり”垢(あか)を落とす”という意味と思われ、行事を手伝うテイレシと呼ばれる方たちが身を清めます。どうやって身を清めるかといえば、やはり冷たい水で、天念寺の前を流れる「長岩屋川」のなかにテイレシが入ってゆきます。
垢離取りは年によって開始時間が異なるようで、2020年は19時からでした。19時になるとほら貝が吹かれ、天念寺本堂で身支度を整えていた僧侶たちが、長岩屋川のなかに祀られる「川中不動」の前に集まってきます。
締め込み姿のテイレシたちが僧侶に続き、長岩屋川のそばへ移動してきます。テイレシは僧侶の読経に合わせ、しゃがみ合掌します。
読経が終わると、テイレシは気合いの声とともに川のなかへと入ってゆきます。
僧侶が立つ川の中の小島の周りを、テイレシは泳いでひと周りし、岸へとあがってゆきます。
テイレシの仕事はこれからですが、まずはひと仕事を終えたテイレシたちの労をねぎらい、周囲の観客からはいっせいに拍手がでます。
このあとテイレシは退場し衣裳を身に着けます。衣裳はズボンとシャツの上に黒上衣を着て黒帯をしめます。そして白木綿のたすきをかけます。頭部には同じく白木綿で鉢巻をして、余った鉢巻は後頭部へ垂らします。現在は足袋を履いていますが、本来はワラジ履きで白浄衣を身に着けていたそうです(参照:天念寺修正鬼会調査報告 『行事の次第』 付録 資料 鬼会式〔豊後高田市教育委員会〕P.1)
※天念寺修正鬼会調査報告 『行事の次第』は小林幸弘氏のご厚意によりいただきました。
『行事の次第』では戦前のテイレシたちの仕事について紹介されています。
戦前まではオニョ(修正鬼会)に奉仕する堂役・タイイレシ・ハヤシカタ・給仕人など役付きの人々は、旧正元日より毎日、住職とともに川中不動前の渕で水垢離をとって別火生活をしていたというが、戦後は廃止されていた(『行事の次第』P.1)。
現在ではサラリーマンなど職業の幅が広がり、数日間も仕事を休んで鬼会中心の生活にどっぷりはまる…ということは困難となったため、「別火生活」が廃止されたと考えられます。
それでも長岩屋地区に住まれている方々は、修正鬼会をはじめとして、毎年、各種行事に参加されているようで、負担は戦前に比べ減ったとはいえ、ご苦労をなさっていると思われます。
今回の記事はここまでです。次回の記事は20時からの「タイアゲ」についてご紹介したいと思います。