日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

小倉南区の民俗芸能『合馬神楽(おうまかぐら)』を調べた

先日、北九州市の指定無形民俗文化財である合馬神楽が奉納される、天疫神社へはじめて行ってみました。神楽が奉納されるというので、広々とした境内のある神社と想像していましたが、その想像よりも小さな神社でした。合馬小学校から南南東へ400mほどの場所にあります。

 

場所:福岡県北九州市小倉南区合馬1590

座標:33.809405,130.833884

 

天疫神社は、竹で覆われうっそうとした丘のなかにありました。鳥居がなければ、ここに神社があるとは気づきませんでした。

境内へ続く参道

境内の様子

拝殿の前にある狛犬

そしてこちらの舞台で神楽が舞われると思われます。

毎年9月の上旬に合馬神楽があるそうです。2018年9月に、わたしは合馬神楽を拝観しに行く予定でしたが、舞いが予定よりも1週間早くなったようで、いつの間にか終わってしまっていました。合馬神楽時期は北九州市のHPで知ることができます(参照:小倉南区のイベントカレンダー)

 

http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kokuraminami/menu23_0020.html

 

合馬神楽について

『北九州市史(民俗)』のP1166に合馬神楽の詳細が記載されていましたので、少しまとめてみたいと思います。しかし神楽について調べれば調べるほど、いろいろな名前の神楽や、いろいろな分類が出てきて頭が混乱してきます。まずは『北九州市史(民俗)』の文を抜粋してみます。

 

”合馬神楽の芸態は京都郡(みやこぐん)・稗田神社から習得したといわれ、したがって同じ京都郡系から習得した横代神楽と、舞い振りはほとんど同じである”

 

つまり、横代神楽から派生したのが合馬神楽ということでしょうか。

 

”演目は舞神楽の「米撒き、手草、奉幣、御福、花神楽」、面神楽の「五行、四つ鬼、岬鬼(みさき)、綱岬鬼、天岩戸開き」、曲芸的な神楽「折敷、三本剣、田鋤、木登り」、座興的な「鯛釣り」、そして「湯立」の十六番である”

 

ここで出てくる神楽の名前が「舞神楽」、「面神楽」、「曲芸的な神楽」というものです。そのような神楽の分類があるのでしょうか?調べてみました。

 

http://www.tohoku21.net/kagura/history/keihu.html

 

「神楽 分類と特徴」というサイトでは、現在、以下の図のような大きな神楽の分類があると紹介されています。

合馬神楽はこのなかでいえば「里神楽」になると思います。この里神楽のさらに細かい分類に「出雲流」と「伊勢流」というものがあります。「出雲流」神話を題材とし能をくみあわせたものと紹介されています。一方、「伊勢流」が別名「湯立神楽」ともいわれ、釜に沸かした湯を神様に奉納したあと、周りの人たちにふりかけるという激しいものです。さらに獅子神楽の「太神楽」というのが曲芸を取り入れた神楽のようです。

 

もういちど、『北九州市史(民俗)』P1166に紹介されている合馬神楽の要点を示しますと…

 

・舞神楽「米撒き、手草、奉幣、御福、花神楽」

・面神楽の「五行、四つ鬼、岬鬼(みさき)、綱岬鬼、天岩戸開き」

・曲芸的な神楽「折敷、三本剣、田鋤、木登り」

・座興的な「鯛釣り」

・「湯立」

 

となります。面神楽に分類されている演目は、どうもストーリー仕立てとなっているようで「出雲流の神楽」に分類されるような印象です。また曲芸的な神楽の演目は、曲芸を取り入れるのが特徴の「太神楽」に分類されるようです。最後の「湯立」は明らかに「伊勢流の神楽」つまり「湯立神楽」と同じ分類のようです。もしかしたら「舞神楽」というのは「奉納神事舞」というものに分類されるのかもしれません。

 

以上のことから合馬神楽は、以下の図のように、3つの神楽の特徴を取り入れたものなのかもしれません。

 

神楽 分類と特色でも”神楽は、それぞれの要素が重複している部分も多く見られ、明確に分けることは難しいようです”と記載されています。合馬神楽もその例のひとつなのでしょう。

 

合馬神楽の始まり

享保年間(1716-1736)、村に悪疫、飢饉が続いて村人、牛馬に被害が出たため、他所から神楽を招いて合馬村(おうまむら)の天疫神社に奉納し、平癒を祈願したのが始まりなのだそうです(参照:『北九州市史(民俗)』P1166)