石の宗教 (講談社学術文庫)を読んでいて、庚申の神様について興味深い記述があったので、メモに残しておきたいと思います。
民俗としての庚申は、猿を山神の化身であるとともに農耕神とする信仰から出たものとおもわれる。(Kindle位置番号 2716/3532)
これは「十.庚申塔宇賀神および円空作の庚申」という項で書かれていたものです。著者である五来重氏が、東京でめずらしい青面金剛庚申塔を見たそうです。
それは王子神社の別当寺にあった庚申塔で、王子山金輪寺のいりぐちで見つけたそうです。調べてみるとウィキペディアに金輪寺が見つかりました(東京都北区岸町一丁目12番22号)
著者が見つけた青面金剛は、頭に蛇のとぐろを巻いた宇賀神を乗せているとのこと。青面金剛像と宇賀神がおなじ像のなかで、刻まれているのだそうです。
今宮八幡宮(福岡県久留米市大城北野町)で見かけた宇賀神↑
宇賀神はそもそも、一年の穀物をつかさどる神さまで、七福神のひとりである弁財天の別称ともいわれます(参照:宿なし百神(東京美術選書 12 ))
だから宇賀神は青面金剛とは関係がないと推察されています。よって、商売繁盛や豊作の神さまである宇賀神が庚申塔に刻まれているということは、庚申信仰自体が農民の豊作祈願であり、都市民の商売繁昌祈願であったことを物語るものであろう…と著者は考えられています。
それにしても、青面金剛と宇賀神がいっしょに刻まれる庚申塔…実際に見てみたいものです。